ドン・エンガスの石垣

「ゴールウェイ港の白鳥」でご紹介した、アイルランド西岸のゴールウェイからは、日帰りでアラン諸島(Aran Islands)を訪問することができます。アラン諸島を構成する三つの島のうち、最大のイニシュモア(Inishmor)島にあるドン・エンガス(Dun Aonghasa、Dunは要塞という意味だそうですので、「エンガスの要塞」という意味になるそうですが、エンガスとは誰のことなのかは分からないそうです)は、3500年前から1000年前頃(紀元前2500年から紀元1000年頃)まで利用された要塞のようです。

北西から南東方向に細長い(長さ14km、幅は最大で4km)島の中央部のくびれた部分の高台に要塞はあります。この写真は、要塞から南東方向を写したもので、右側が大西洋、左側がゴールウェイ湾です。遠くの台地上に無数に見える縞模様は石垣です。島中が石垣で区画整理されている感じの島でした。

要塞を構成する石垣は、内側から3層になっていて、上の写真に写っているのは2層目の石垣です。正面の石垣の先に見える、多数の岩が芝生から突き出ている部分は、2層目と3層目の間に設けられた、外敵の進入を防ぐために意図的に岩石をでこぼこに埋め込んだ場所だそうです(なぜか、この目的のための防壁を意味するフランス語の、chevaux de frise と呼ばれているそうです)。下にコピーさせていただいた絵はがき(Real Ireland Design Limited、Liam Blake Ref:SP 497)をご覧いただくと、この要塞が、3層構造になっていることだけでなく、高さ90mの崖の上にあることも分かります。ちなみに、上の写真は、下の絵はがきで、chevaux de friseのすぐ内側の2層目の石垣が右上で途切れ、そこに背の低い石垣が垂直に食い込んだようになっているところから右側を撮ったものです。

この要塞を訪問するには、船着き場のあるキルロナン(Kilronan)村から、6kmくらい離れたビジターセンター(下の写真)に自転車やバスで行き、そこからは徒歩で要塞まで登ることになっています。

ビジターセンターの近くから見上げた砦です。

砦へ登る道の途中から、ビジター・センター方向を見たものです。

下の写真の中央が一番内側の石垣です。

崖の上には、防護柵がないため、ツーリストはこのように寝転がってのぞき込んでいました。風に吹き飛ばされて転落死した旅行者もいたそうです。もしこの島が、「土建屋国家」日本にあったとすれば、間違いなく立派な手すりが設置されていたことでしょう。

(2004年10月10日)

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