問題 15(音楽)の答え・・・(b.沈黙する)が正解です。

「アメリカの心の歌」(長田 弘著、岩波新書、151―152ページ)にそのコンサート会場の様子が描写されています。

「・・歌が終わっても、拍手はなかった。しーんと静まりかえった会場は物音一つしない。ウェイロンは埋葬されているような気分だった。・・・・ナヴァホ族の一人がいった。沈黙はわれわれの最高の尊敬の表現なのです。ここにこれだけの人がいてこんなにも静かなのは、みんな畏敬をもってあなたの歌に対しているためなのです。しかし、誰の目にも涙が滲(にじ)んでいます」

白人のウェイロンの歌った「ラブ・オブ・ザ・コモン・ピープル」はナヴァホの国歌ともいえる歌になったようです。その後ウェイロンはナヴァホ居住地の奥深い場所でまでコンサートを開くようになり、つねに超満員の聴衆を集めたそうです。

この本の203ページによると、ウェイロン・ジェニングスはその後ウィリー・ネルソンと組んだアルバム「ウェイロンとウィリー」でグラミー賞もとったそうです。

ウェイロンは最初は、ロカビリー歌手のバディ・ホリーの最後のバンドでベース・ギターをひいていました。しかし、バデイ・ホリーが人気が絶頂に達していた59年冬に飛行機事故で亡くなってから、ウェイロンはアリゾナ州に引きこもってしまったそうです。ところが、名ギタリストのチェット・アトキンスによって、歌の世界に連れ戻され、その後、ニューカントリーとよばれる新しい歌の動きの源流になったそうです。

ナヴァホ族の感動の表現は、文化の違いというものを考えさせる材料だと思います。一つの文化では、否定的な感情を表現する行動が、別の文化では強い感動の表現になるということもあるという例ではないでしょうか。しかし、この感動の表現は、その背景を説明されれば、どんな民族の人でも了解できるものではないでしょうか。私は、「万雷の拍手」や「スタンディング・オベーション」などの世界共通ともいえる感動の表現よりも、こちらの方が深い感動を受けているという印象を与えるような気がします(98年3月21日)。

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