問題56(政治・経済)の答え・・・「(d. われわれ一人ひとりが自らを改革)しないうちはこの国は再生しない」が正解です。

「人手」が減るため一人ひとりの「働き」を高めることによってしか経済は成長できなくなる

記事が書かれた97年と2020年とを比較して最も深刻化が予想されるのが、人口の減少と高齢化です。人口が今後どの程度減少するとみられるかについては国立社会保障・人口問題研究所の「少子化情報ホームページ」(http://www1.ipss.go.jp/index.htm)問題10(人口)をご参照ください。高齢化については、 97年元旦付の記事に次のように指摘されています。

「・・・2020年には国民の4人に1人が65歳以上の高齢者という世界最高齢国になり・・・・現状の仕組みを変えずに放置すれば、財政・年金など既存のシステムはもちろん破たん。2020年の国民負担額(税金と医療、年金などの社会保障負担の合計額)は618万円と95年(209万円)の約3倍に増える」

総人口の減少以上に深刻なのは、高齢化による労働力人口(働ける人の人口、年齢が14歳以上64歳以下で、所得を得るために働いている人、休業中の人、失業中の人の合計)の減少のようです。これは、経済の成長力は、「人手」(労働力人口)と「働きぶり」(労働生産性、労働によって生み出される1人当たりの(付加)価値)で決まるためです。

83回目の記事には、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)調査部の田中賢治氏の次のような予想が紹介されています。

「2020年の労働力人口は高齢化や少子化のため、96年から最大で600万人、9%も減少する。今後毎年25万人ずつ減ってゆく計算だ。90年代と同程度の年2%の実質成長を続けるには、生産性を年2.4%伸ばさなければならない。90―96年の3倍という高いハードルだ」(引用者注:90年代末に成長率が急減速したため、90年代を平均した経済成長率は1%程度となったようです)

この記事の最後には、次のように指摘されています。

「外国人労働者を大量に受け入れて労働力人口を増やさない限り、21世紀も(封建農業から欧米型の工業社会へかじを大きく切った)明治と同様、大きな飛躍が必要になる。それは、工業社会から情報やソフトが富を生む知識社会へと、産業構造を転換することだ。「田畑」から「工場」へは、外から技術やノウハウを導入して跳び移った。だが、次の飛躍は、日本人一人ひとりが、知識を生む人間資本に自らを変えてゆく「内なる改革」でしか実現しない」

構造改革には市民社会の確立と民主主義的統治が必要

また、真の構造改革を進めるためにも、個人の自立が必要なようです。最終回の記事には次のような指摘があります。

「・・・競争をするより、官に仕切ってもらってみんな仲良くやろう・・・そうやって「官主国家」をつくり、族議員をはびこらせ、はては借金まみれの国にしてしまったのはわれわれ市民である。日本的雇用のなかで他人と競い合ったり自立したりしようとせず、企業の競争力をそいでいるものもわれわれ勤労者なのだ。・・・集団主義は工業化で欧米に追いつくのに力を発揮した戦後日本のひとつの精神的な支柱だったといえる。それがいつのまにか「仲間内主義」に変質し、・・・もたれ合いやなれ合いばかりが目立つようになった」

また、86回目の記事「市民社会の確立で増税の連鎖断つ」では、真の行政改革を進めるためには、日本は、政治に積極的に関与する市民が統治する、真の民主国家になる必要があると述べられています。

「国民の代表の政治家が法律を作って政策を決め、執行機関の政府を監視するのが民主制の統治原理。日本の制度はそうでも主役の国民が観客になってしまっているので、責任のない国民に税金を負担させることがまかり通る」ことになるようです。たとえば、農協に配慮した密室の政治決着で6,800億円の税金を使われた住専(住宅専門金融会社)処理について、中坊公平氏は「国民主権の法治国家ならあり得ない解決法」であると述べているそうです。

国民が税金の使途に無関心なのは、日本独特の源泉徴収制度(問題6(経済史)解答をご参照ください)や法人企業の7割が赤字のため税金を払っていないことと関係があるようです。

しかし、国民が目を離している間に、国の借金(公的長期債務)は2001年度に660兆円に達する見通しで、国民から郵便貯金によって集めた資金などを政策的配慮で融資する「財政投融資(財投)」についても、86回目の記事によれば、大蔵省(現財務省)は不良債権はないとしているにもかかわらず、「400兆円を超す財投の残高のうち不良債権は100兆円規模」と指摘する民間エコノミストもいるそうです。この不良債権の処理にも、税金が投入されるのは確実のようです。

日本人の政治に対する無関心さについては、『人間を幸福にしない日本というシステム』(毎日新聞社刊、カレル・ヴァン・ウォルフレン著)にも詳しく述べられていますが、同氏の見方については、問題38(政治)をご参照ください。

「構造改革」を一枚看板にして登場した小泉首相は、まだほとんど実績を上げていないことを考えると、異常とも言える人気を保っています。ただ、日経新聞の見方が当たっているとすれば、首相が代わっても、国民一人ひとりの意識に変化が起こらない限りあまり大きな変化は期待できないようです(2001年9月24日)。

2020年1月1日追記:「最近気付いたこと」「23年前の日経新聞による2020年の予想・・・残念ながら当たってしまったようです」という記事を追加しました。

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