問題74(人権)の答え・・・「日本人が殺した中国人の数が(c. 1,000、)万人以上に達していることを、ほとんどの日本人は知らないし、教育現場でも教えられていない・・・・」が正解です。

1,000万人という死者数は、『20世紀全記録』(講談社刊、企画委員、小松左京、堺屋太一、立花隆、この本の主要部分はドイツ語版の『クロニック』を、日本向けに編集し直したもののようです、669ページ)に引用されていた、本多公栄著、『ぼくらの太平洋戦争』でも確認できました。

太平洋戦争による推定死亡者数(『20世紀全記録』に引用されていた本多公栄著『ぼくらの太平洋戦争』より)

国名 推定死亡者数(単位:万人) 補足説明
中国 1,000
朝鮮 20
ベトナム 200以上
インドネシア 200
フィリピン 105 軍人、抗日ゲリラ約6万人、一般市民100万人
インド 350 大部分はベンガルの餓死者
シンガポール 0.5 虐殺による死者
ビルマ(現在のミャンマー) 5
セイロン(現在のスリランカ) 不明
ラオス 不明
カンボジア 不明
ニュージーランド 1.1625 軍人
オーストラリア 不明
モルディブ 数10人 餓死者
上記地域の死亡者推計 1,882
日本 221.3903 軍人、軍属155万5,308人、一般国民65万8,595人。このうち、原爆の犠牲者は広島で25万人、長崎で7.4万人。1945年3月10日の東京大空襲では8万人以上となっています。

『20世紀全記録』の前ページ(668ページ)に引用されていた、『ブリタニア国際大百科事典』のデータでは、中国の人的損害は不明としながら、グラフでは1,000万人以上であったという推定データが示されています。また、上の表によれば、太平洋戦争で日本人は約1,880万人のアジア・大洋州の人々を殺したようです(このほかに、アメリカ、イギリス、オランダなどの人々も殺していますが、その数は近いうちに調べておきます)。

人類史上最大級の民族虐殺である可能性

『世界大百科事典』(平凡社)では、『十五年戦争(太平洋戦争〔1941-1945〕、満州事変〔1931-1937〕、日中戦争〔1937-1945〕の総称)の日本人犠牲者は,戦死または戦病死した軍人・軍属約230万名,外地で死亡した民間人約30万名,内地の戦災死亡者約50万名,合計約310万名に達した。・・・・これに対し,中国の犠牲者は軍人の死傷者約400万名,民間人の死傷者約2000万名にのぼり,フィリピンでは軍民約十数万名が死亡したと言われているが,その他の地域の犠牲者数は不明であり,日本軍と戦ったアメリカ,イギリス,オーストラリアなどの被害も物心両面にわたって甚大なものであった』とされています。つまり、十五年戦争による中国人の犠牲者数は軍人と民間人を合計すると実に2,400万人に達したことになります(
お断り:上の文章では、犠牲者数=死傷者数と考えられていますが、中国政府は死傷者数は3,500万人であるという公式見解を明らかにしているらしい(『「三光作戦」と高度分散配置』 http://park17.wakwak.com/~ueba/sankousakusen.5.html )ことや、太平洋戦争の死者数との関係、さらに文脈から判断して、ここでは、犠牲者数=死亡者数と解釈させていただきました。ただし、この点に関しては、確認中です)。

この犠牲者数は、ナチス・ドイツによって殺害されたユダヤ人の数(560─586万人)やソ連人の数(1,800万人、『20世紀全記録』)を上回り、一つの民族による他民族の虐殺としては人類史上最大である可能性があります。その殺害の方法も、弾薬を節約するためなのか、日本刀で首を切り落としたり、銃剣(先に短い剣を付けた小銃)で突き刺すなどという、残忍な方法によっていた例がかなりの数に上るとみられるために、いまだに各国人の日本人像に暗い影を落としています。

日本人による戦時の大量虐殺のことを知らないのは日本人だけかも知れません

例えば、『イギリス発/日本人が知らないニッポン』(緑ゆうこ著、岩波アクティブ新書)、74ページの<人間性を知らない日本人>によれば、「太平洋戦争に関するテレビ番組は、(イギリスでも)21世紀になっても毎年必ず新しいシリーズが作られ、繰り返し放映されている。そのたびに新聞の番組欄に写真入りで紹介され、放映後には番組評も載るので、番組そのものは見なかった人でも、新聞のテレビ欄の印象は残っているだろう」と述べられています。

例えば、『デイリー・エクスプレス紙』(2001年6月18日号)の、「地獄とは、日本帝国陸軍に捕えられることだ」 「中国人を殺すのは犬を殺すのと同じだった」という番組評の一部を以下で引用させていただきます(同書74-75ページ)。


 『今の人たちは、ドラッグ地獄だのアルコール地獄だのというけれど、本当の地獄とはそんなものではない。地獄とは日本帝国陸軍に捕らえられることだ。

 チャンネル4の番組『太平洋の地獄』で元捕虜が回顧したところによると、日本軍は赤十字の旗をかかげた病院をも襲い、医者や看護婦を銃でなぎ倒し、手術台に横たわっている患者を銃剣で刺し殺したという。「自分たちイギリス人の兵隊が進撃して日本兵がしたようなことをするのは、どう考えても想像できない。」

 フィリピンでは米兵捕虜が死の行軍をさせられ、倒れた者は日本兵にサムライ刀(ママ、日本刀のことか)で首をはねられた。「彼の頭が転がっている光景は絶対に忘れない。頭のない体の手足が、まだ動いていた。」

 1937の南京で女子どもまで残酷に殺されている記録映像は、もう見ていられなかった。シロー・アズマという白髪の人の好さそうな日本人は南京大虐殺を振り返り、「中国人を殺すのは犬を殺すのと同じだった。私たちは人間性などまったく考えていなかった」と語る。日本人にとって戦争は勝つか負けるかでしかなかったのだ。・・・・・・・』


第二次世界大戦に参加していた国々の国民のなかで、日本軍の戦争犯罪のことを知らないのは、日本人だけかも知れません。日本人の大多数が、第二次世界大戦について、このような基本的情報も持ち合わせていないのは、文部省/文部科学省が戦後一貫して、小中高の歴史教育で、第二次世界大戦での日本の戦争犯罪のことを、生徒たちに隠していただけでなく、この動きに司法組織も協力していたとみられるためです。

南京大虐殺は日本軍の組織的行動であるという記述を教科書に載せようとした家永氏に対して、文部省は書き直しを命じ、これを不服として1965年に起こされた家永訴訟で、文部省の教科書検定が違法であったことが1997年に認められるまでに、32年もの年月を必要としたことは、問題32(人権)答えでもご紹介しました(家永三郎氏は、2002年11月29日に89歳で永眠されました。心からご冥福をお祈りします)。

また、拉致問題で人気者になった安倍晋三・現自民党幹事長代理と、こわもての中川昭一・現経済産業相からの圧力で、特集番組「問われる戦時性暴力」という、従軍慰安婦問題を扱った番組の内容が大幅に変更されたとみられることから、NHKも国民を無知な状態に保つために重要な役割を果たしていることが分かりました(「NHKが平壌放送になった日」もご参照ください)。

日本人は自分のことを、和の精神を尊重し、自然を愛(め)で、武士道の伝統を受け継ぐ、心静かな民族と考えているかも知れません。ところが、いわゆる日本通と呼ばれるごく一部の人たちを除いた大多数の外国人からみれば、日本人は第二次世界大戦で、大国アメリカに自殺的な奇襲攻撃をしかけただけでなく、東アジア、東南アジアでは野蛮なやり方で、人類史上に残る大量虐殺を行い、戦後は産業の育成に注力するあまり、歴史上最大級の自然破壊(つまり公害)事件を多数生み出すという、はた迷惑で、人間離れした、エコノミック・アニマルに映っているようです。

最近、中国各地で、反日デモが続発していますが、現政権にとって都合の悪い、自国の血塗られた歴史を国民に知らせないという、日本政府の態度が一番の問題ではないかと思います。これまで日本は、強い経済力・技術力を後ろ盾にして、自国政府にとって都合の悪い歴史的事実を、国民には知らせないという方針を貫き、日の丸・君が代の強制をはじめとする、戦前同様の愛国主義教育を強化してきました。しかし、日本の経済力が衰退する一方、アジア諸国が急速に経済力・技術力を付けてきたため、『日本なしのアジア』も考えられるようになったこともあって、アジア諸国の人々は、日本にこれ以上勝手なことは続けさせないと思い始めたのかも知れません
(2005年4月24日)。


(2019年10月21日追記:太平洋戦争の全体像については、問題97(政治)をご参照ください)。

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