問題100(原子力発電所)の答え・・・2018年3月時点で震度7の揺れでも安全機能が維持できるとされる原発は、(c. 1基)にすぎませんでした。この原発は現在は新規制基準審査中のため稼働していない中部電力浜岡原発4号機(静岡県)です。浜岡原発は東海地震の震源域(フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートという三つのプレートの交差点)の真上に位置し、世界一危険な原発と言われているそうです。 また、浜岡原発4号機以外の原発は、設計基準上震度 7に耐えられないことになっているため、震度 7の地震に襲われると破壊される可能性が高いようです。ちなみに日本全国でみると、最大震度が7の地震は、東日本大震災が発生した2011年3月11日から2024年2月17日までの約13年間に5回、6強の地震は10回、6弱の地震は18回、5強の地震は66回それぞれ発生しました。

原発は地震に弱い

原発に関してほとんど知られていない非常に重大な欠点は、原発は地震に対して非常に弱いということです。もともと米国で開発された装置をそのまま日本に持ち込んだため、耐震性を高めようとしてもかなりの無理があるようです。

日本には2種類の原子炉があり、福島第1原発などの東日本の原発の多くは沸騰水型炉(BWR、Boiling Water Reactor、米GE、日立、東芝製)であるのに対して、西日本では加圧水型炉(PWR、Pressured Water Reactor、米WH、三菱重工製)が多いようです。日本全体ではBWRとPWRがほぼ同数あるようですが世界的にみると3/4の原子炉がPWRとなっています。

原発の炉心にはBWRの場合800本程度の燃料棒(PWRの場合は200本程度)が上から吊り下げられており、運転を停止させるためには、BWRの場合200本程度(PWRの場合には600~1000本程度)の制御棒(中性子線を吸収して核反応を抑制するための棒)を燃料棒の隙間に差し込む必要があります。PWRの場合は制御棒は上から差し込む構造になっているため、電源を喪失しても重力で制御棒を上から2秒程度で落とし込むことが可能となっています。これに対して、BWRの場合には炉心上部にタービンに送る蒸気から湿分を除去するための構造部が設置されているため、制御棒は炉心に下から電力で差し込む構造になっていることから、電源を喪失した場合には、原子炉を停止できなくなります。

5m近い長さの燃料棒を吊り下げたり、同程度の長さの制御棒を隙間に正確に挿入する構造は、素人考えでもかなり地震に対して弱いとみられ、これが原発の耐震性も低さの一因となっているとみられます。

原発の危険性は、専門知識がなくても理解できる

2014年5月21日に関西電力大飯(おおい)原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を下し、さらに2015年4月14日に、関西電力高浜原発3・4号機の再稼働差し止めの仮処分決定を行った、元福井地裁裁判長の樋口英明氏が書かれた『私が原発を止めた理由』(旬報社刊)によれば、原発の危険性は専門知識がなくても理解できるそうです。

樋口元裁判長はすでに定年退官されていますが、裁判官が退官後とはいえ自分の関わった事件について論評することはほとんどないそうです。「論評しないことは裁判所の伝統であることは間違いない」そうですが、その伝統を破ってまで樋口元裁判長がこんな本を書かれたのは、「専門家でもない私の目から見ても、原発の危険性があまりにも明らかだということくらい恐ろしいことはない」ためだそうです。さらに「原発や地震学について詳しい知識は要りません。思い込みを持たずにものごとを素直に捉える目を持った高校生以上の方が、この本を読んでいただければ原発の危険性がどれくらい大きいかがおわかりになると思います。そして、その原発を止めるために何をしたらいいかについて考えていただきたいと思います」と提言されています。

下にコピーした耐震設計基準(基準地震動、表の注参照)の表を見れば分かるとおり、原発の建設当時の耐震設計基準は、各原発によって異なりますが最小で震度5強、最大でも震度6弱となっています。この表では最新の2018年3月時点での基準でも最小は震度6強で、震度7に耐えられるのは1基に過ぎません。つまり、原発が震度7の地震に襲われた場合安全機能が維持可能とされているのはわずかに1基のみで、残りは破壊される可能性が高いとみられます。さらに2018年3月時点で耐震設計基準が6弱となっている8基の原発は、震度6強の地震があった場合でも破壊される可能性が高いとみられます。

(表-1)耐震設計基準(基準地震動、各原発の安全機能が維持できるとされる最大の震度)

発電所 建設当時 3.11当時 2018年3月時点
泊(北海道) 1~3号機 5強 6弱 6弱
大間(青森) 5強 6弱
東通(青森) 5強 5強 6弱
女川(宮城) 1号機 5強 6弱 未申請
2号機 6強
3号機 未申請
福島第1(福島) 1~6号機 5強 6弱 廃炉
福島第2(福島) 1、2号機 5強 6弱 廃炉
3、4号機
柏崎狩羽(新潟) 1~4号機 5強 7 未申請
5号機 6強 未申請
6、7号機 6強
東海第2(茨城) 5強 6弱 6強
浜岡(静岡) 3号機 6弱 6弱 未申請
4号機 6強~7
5号機 未申請
志賀(石川) 1号機 5強 6弱 未申請
2号機 6強
敦賀(石川) 1号機 5強 6弱 未申請
2号機 6弱 6強
もんじゅ(福井) 5強 6弱 未申請
美浜(福井) 1、2号機 5強 6弱 未申請
3号機 6強
大飯(福井) 1、2号機 5強 6弱 未申請
3、4号機 6強
高浜(福井) 1~4号機 5強 6弱 6弱
島根(島根) 1号機 5強 6弱 未申請
2号機 6弱
3号機 未申請
伊方(愛媛) 1、2号機 5強 6弱 未申請
3号機 6弱
玄海(佐賀) 1、2号機 5強 6弱 未申請
3、4号機 6弱
川内(鹿児島) 1号機 5強 6弱 6弱
2号機
震度の範囲 5強~6弱 5強~7 6弱~7
加速度(ガル)の範囲 270~600 450~2300 600~2000

出所:小岩昌宏、井野博満『原発はどのように壊れるか』原子力資料情報室、110ページ。
注:この表は『私が原発を止めた理由』の48ベージに載っていたものを、加工したものです。元々の表では耐震設計基準(基準地震動)の大きさが加速度(ガル=cm/s2、ただしsは秒を表す)で表示されていましたが、加速度を、同書の36ページに載っていた下の表を用いて震度に換算しました。震度は最大の揺れに対応するため、加速度の方も最大値が関係しています。(地震の強さをなぜ加速度で表すのかについては、一番下の(付録)「力と加速度の関係」を御参照ください)

震度と最大加速度の概略の対応表

震度等級 加速度(ガル)
7 1500ガル程度以上
6 強 830~1500ガル程度
6 弱 520~830ガル程度
5 強 240~520ガル程度
5 弱 110~240ガル程度
4 40~110ガル程度

出所:国土交通省国土技術政策総合研究所(ただし、『私が原発を止めた理由』の36ページに載っていたもをコピーさせていただきました)。

原発の耐震設計基準(基準地震動)の問題点

原発の耐震設計基準には、誰が考えてもおかしい点が二つあります。つまり、(1)(問題文でも触れた)原発ごとに基準が違うという点と、(2)建設時に比べて耐震性が大幅に改善されている点です。

(1)原発ごとに基準が違う・・・原発ごとに「予想」した最大の揺れを前提としている

原発以外の建造物の場合、耐震基準が建造物ごとに違うということはあり得ません。例えば、一戸建て住宅の場合には1981年に定められた新耐震基準では「震度6強~7程度の大地震でもすぐには倒壊・崩壊せず、人命が損なわれるような壊れ方をしないこと」が求められています。さらに、住友林業が販売する住宅の場合3,406ガル(震度7の下限となる加速度1500ガルの2倍以上)、三井ホームの販売する住宅の場合、5,115ガル(同じく3.4倍)の地震にも耐えられるように、設計されています(下の図は『私が原発を止めた理由』の40ページからコピーさせていただきました)。



原発の設計基準が原子炉ごとに違っているのは、原発付近の断層の調査によって、予想される最大の揺れ(加速度)を算定して、その揺れまで耐えられることが求められているためです。ところが、特定地点で将来地震が発生するかどうかも予想できないことは常識で、ましてやその地震の最大の揺れまで予想するのは不可能であるのは一般常識と言えます。ところが原発推進派の学者や技術者は、原発立地地点で将来発生する地震の最大の揺れを予想できると主張しています。これは常識外れとしか言えません。日本の原発の耐震基準がこんな空論に基づいて定められているというのは狂気としか思えません。

(2)建設時に比べて耐震性が大幅に改善・・・机上の計算だけで底上げしたケースが多い

表-1に示されているように、原発の建設当時の耐震基準は震度5強~震度6弱の範囲(270~600ガル)に入りましたが、その後、2011年3月11日の東日本大震災時点では、震度5強~震度7の範囲(450~2300ガル)にまで大幅に改善しました。さらに2018年3月時点では震度6弱~震度7(600~2000ガル)の範囲となり、下限が5弱(450ガル)から6弱(600ガル)に改善しました。

ただ不思議な点は、原子炉の補強では、原子炉本体を補強することは不可能なので、配管の補強にとどまっており、配管の補強だけで、全体の強度がこれほど改善するとは思えません。例えば、現在震度7の揺れに耐えられると表明されている唯一の原子炉である浜岡原発4号機の耐震基準は、建設当時には600ガルでしたが、東日本大震災時点では800ガルに改善し、2018年3月時点では2000ガルと、建設当時の耐震基準の3.3倍にまで向上しています。

耐震基準の急上昇について特定非営利活動法人(認定NPO)「原子力資料情報室」が出している「用語解説 基準地震動(Ss)」という文書には、実物の耐震性を高めたケース以外に、「モデルを変更したり、ゆれに対する抵抗係数(減衰定数)をより大きなものに変更したりして計算し直した結果、より大きな基準地震動に対してもクリアできたという、見かけ上の耐震補強である場合が多いようです」と書かれています。つまり、机上の計算だけで耐震強度が高まったと考えた場合がかなりを占めるとみられます。

(付録)「力と加速度の関係」

高校の理科で物理を選択された方は、力(F)と加速度(a)の間には、力が加えられた物体の質量(m、重さ)を使って、

F = a × m ..... (1)

という関係があることが、力学の授業の最初の頃に教えられるのでご存知のことと思います。以下では物理を選択されなかった方のためにこの式の意味をご説明します。

話を簡単にするために、運動が1本の直線上だけに限定される(つまり、鉄道の直線区間のように一直線上だけ移動が可能である)と考えます。さらに考えている物体に加わる力が1つ(直線に並行な方向に働く力)だけであると考えます。直線上に障害物や壁があって運動が制限されているような場合には、最初に加わった力だけでなく、逆向きの力も加わるため、2つの力を合成した力を考える必要が生じます。

加速度(a)は速度の1秒当たりの変化率のことです。止まった物体や一定の速度で直線上を動いている(慣性運動と言われます)物体は速度が一定なので、加速度がゼロで、力(進行方向には)は働いていません。例えば、電車が止まっているときや、等速で進行している場合には、進行方向には力が働かないことは、よくご存知だと思います。

これに対して、走り始めに加速する場合や、ブレーキを掛けて減速する場合には、それぞれ進行方向および逆向きに力が加わるため、足を踏ん張ったり、吊り輪につかまる必要が生じることもあります。この力は、急加速や急停止のように、短時間で速度が大きく変化するときには大きく、新幹線の発車、停止の場合のように、非常にゆっくりと速度が変化する場合には弱くなります。電車に立った状態で乗った乗客に加わる力は、床から足に加えられます。体重の重い人は、体重分強く踏ん張る必要があり、体重の軽い人はそれほど力を必要としませんが、この関係から、体重が重い(質量の大きい)人の方が強い力で支える必要があることが分かります。つまり式(1)で力は、質量(重さ)に比例しているのはこんな関係を示しています。

地震の強さを、力の大きさで表そうとすると、上の式(1)から、力を受ける物の重さによって大きさが変化します。重い物には強い力が加わり、軽い物には小さい力しか加わらないのは当たり前のことです。そのため地震の強さを力の大きさで表そうとすると、力が加わった物の質量の差に応じて、無限の値をとるため混乱の元になります。こんな混乱を避けるために、揺れの強さは加速度で表す方が適切と考えられます。

加速度の単位・・・上で加速度は速度の1秒当たりの変化率であると書きましたが、例えば、秒速100cmで動いていた物体が、1秒後に秒速200cmに加速したとします。その場合1秒間の速度の変化率は、(秒速200cm)/(秒速100cm) = 2 (秒速/秒)となります。物理学では秒は(英語で秒を表すsecondから)sで表すことが多く、秒速の単位は長さの単位としてcmを使えば、cm/s と表されます。加速度の単位は(秒速/秒)ですので、長さの単位としてcmを使えば (cm/s)/s = cm/s2 と表されます。地震の強さの尺度(単位)であるガルはcm/s2のことです。長さの単位としてメートル(m) を使えばm/s2 となります。

重力との比較・・・地上にあるすべての物質には、リンゴが木から落ちるのを見てニュートンが発見したと言われている万有引力である、重力が働いています。空中で持っている物体から手を離すと落下します。この物体には重力が加わっています。その大きさは重さに比例しますが、加速度は980ガルで一定です(地域によってわずかに差があります)。つまり、静止していた物体が1秒後には980cm/s = 9.8 m/s = 秒速9.8mまで加速します。重力加速度は普通g(gravity)という記号で表記されます。震度7は加速度で表すと1500ガル= 1.53 g 程度以上となりますから、重力の1.53倍以上の力が加わることになります。三井ホームの住宅は重力加速度の5.2倍の加速度にも耐えることになっています。これに対して、日本最強の浜岡原発4号機は、最大でも重力の2倍の加速度にしか耐えられません、浜岡原発4号機以外の原発はもっと低い加速度でも壊れる可能性が高いとみられます。

即刻すべての原子炉は廃炉にすべき

日本の国土面積は37万8,000km2と世界の陸地面積全体のわずか0.29%にすぎません。一方、世界で発生する震度6以上の地震の17.9%が日本で発生しています。このため、日本の単位面積当たりの震度6以上の地震の発生率は、世界の平均の61倍となります。おまけに最近では世界中で大地震が頻発するようになり、近い将来に南海地震の発生も予測されています。こんな危険な場所に、原発を建設するのは狂気としかいえません。即刻すべての原発の原子炉は廃炉にすべきです。

(2024年6月13日)


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