10年ぶりに海外旅行に行ってきました

10年ぶりに家族で海外旅行に行ってきました。行き先はイギリスとフランスで、8月31に出発して、9月15日に帰るという、わが家始まって以来の大旅行でした。ただ、ヨーロッパ往復10万5,000円というキャセイパシフィック航空(食事・サービスはまずまずでした)を利用して、イギリスでは、かみさんの友人の房枝さんのお宅に泊めていただくというけちけち旅行でした。旅行中に気づいたことで、これから旅行される方の参考になるのではないかと思う話をいくつかご紹介します(房枝さんがこの文章を読まれて、いろいろな誤解があることを指摘して下さいましたので、それぞれの節の後に房枝さんの電子メールからコピーした、ご意見をご紹介させていただきます)

(1) ロンドンは物価が高い…ヒースロー空港に着いてロンドン市内のパディントン駅(ペルーの山奥から出てきた、例のくまが、だれか世話をしてくださいというカードを首からぶら下げて、かばんにすわっていたところです)まで15分の列車の切符が10ポンド(急落後の現在のレートでも1,770円)もするのにまず驚きました。よく調べると、もっと安い地下鉄で行くこともできたようです。その地下鉄の初乗り運賃も1.4ポンド(現在のレートで248円)と東京(160円)の1.55倍です。食事も高く、普通のレストランで食事をしようとすると、少なくても10ポンドくらいはかかります。マクドナルドでも5ポンドはかかる感じです。ロンドン塔などの、入場料も大人は10.5ポンドで日本の基準からするとちょっと高い感じです。全体として、1ポンドで買える商品やサービスの価値は、日本で100円で買える商品やサービスと同程度という感じがしました。1ポンドの価値は、実際のレート(出発時の換算レートは180円でした)ではなく、100円であると考えなければ、ばかばかしくて物を買う気が起こりませんでした。

(この見方に対する房枝さんのご意見)イギリスの交通費が高いことは確かですが、いろいろオプションがあるのがこの国の特徴で、Heathrow Expressは開通したばかりで例外的に高いオプションだったのです。また往復だとかなり割安で、Reading-Heathrowのcoachは片道£7.50が往復だと£8.50です。地下鉄はカルネだと10枚で£10ですから1枚£1、トラベルカードならzone 1 & 2 が£3.80で乗り放題、ファミリー・カードなら大人は£3.00,子ども(15歳まで)は60ペンスです。電車もRail Cardだと大人は1/3割引、子どもはSouth East圏内どこでも£1、という具合で、私たちはスタンダード料金はめったに払わないのですが、旅行者にはわかりにくくて面倒なので、高くついてしまうようですね。衣類なども日本よりは安いと思うし、普通は7月と1月のセールでまとめ買いをしますから、£1が100円の価値というのはちょっとオーバーじゃないでしょうか。

(2) ロンドンでインド人に2回もだまされそうになりました……最初はインド・レストランで8ポンドのランチが安いので入り、食事を済ませたところ、計算書には二人で70ポンドと書いてありました。持ってきた人を呼んで、"Is this 70 ? "と聞いたところ、その人は持ち帰って、正しい計算書を持ってきました。その目つきは、いかにもすまなそうであると同時に、最初からだまそうとしていたという感じがありました。かなり、大きな声で言ったので、訂正せざるを得なくなったのかも知れません。もし、こちらが下手に出たとすると、なんだかんだ、でたらめを並べられそうな雰囲気がありました。2回目は、町の食料品店で9ポンドの買い物をしたときに、100ポンドのトラベラーズチェックで支払ったら、41ポンドしかおつりが戻ってきませんでした。これも、少ないではないかというと、いかにも間違ったかのような表情をしますが、レストランの場合と同様に非常にずる賢こそうな顔つきでした。こちらが、十分に抗弁できない場合には、押し通される可能性があると思いました。今回お宅に泊めていただいた、かみさんの友人の房枝さんのご主人で、オックスフォード出身の言語学者でレディング大学助教授のリチャードさんは、こちらでは、どのようにしたら自分はだまされる可能性があるかを絶えず考えておく必要があるとおっしゃっていましたが、正にその通りだと思いました。特に、ロンドンのインド人(バン グラデッシュ人、パキスタン人と区別ができませんが)には注意してください。

(この見方に対する房枝さんのご意見)こちらではインド人よりもパキスタン人のほうが評判が悪くて(イスラム教徒のせいもありますが)、パキスタン出身なのにインド人を名乗る人もいるくらいです。人種差別の対象になりやすいのもこの人たちです。旅行者をカモにしようとするのも、移民が多いようです。
リチャードの肩書きですが、イギリスのLecturerはアメリカのAssistant Professorに相当する場合が多く、助教授と訳したほうがあたっていると思います。イギリスのシステムでは、Professorは非常に少なく、ほとんどがLecturerで、時間講師からアメリカのProfessorにあたるポストまで含まれます。イギリス人は知る人ぞ知る、というのが好きで、外部の人にはわかりにくいのです。間にReader とSenior Lecturerというポストがある場合もありますが、これも少なくて、日本語に訳しにくいポストです。

(3)トラベラーズチェックの使用を断られるケースがけっこうありました・・・・・・10年前と比べて一番面食らったのは、トラベラーズチェックの使用を断られるケースが結構あったということです。ホテルや空港の免税店などで断られることはありませんでしたが、駅の売店や街の食料品店などではほとんど通用しませんでした。ロンドンでは幸い、銀行や街の両替屋のお世話になる必要は生じなかったのですが、フランスでは4回両替えする必要が生じました。一度は、大手銀行のクレディ・リヨネで、ここでは手数料はかかりませんでした。小さい地方銀行でも、2回両替えしましたが、こちらではともに35フラン(約640円)とられました。最悪だったのは、銀行が休みの日にバスティーユ広場の近くの街の両替屋で2,000フラン(約3万6,700円)両替えした時で、手数料を80フラン(4%)もとられました。しかも、計算書もくれないため、いい加減にとられたのかもしれません。トラベラーズチェックはあまり高額にならない限り、着いたらすぐに大手銀行で現金化しておいた方がいいようです。

(この見方に対する房枝さんのご意見)こちらではクレジット・カードが普及していて、£10以上はカード払いが普通です。ヨーロッパ共通のユーロチェックも通用しにくくなりました。

(4)ロンドンの新グローブ座では5ポンドでシェークスピア劇を見ることができます・・・・・・本物のグローブ座がちょうど400年前の1599年に建設された場所に97年に完成した新グローブ座がロンドンの新名所となっています。今年のアカデミー賞を7部門で受賞した「恋いにおちたシェークスピア」(Shakespeare in Love)の人気もグローブ座の人気を高める要因になっているようです。私達が新グローブ座に行った時に、たまたま30分後に、私の知らないThe Comedy of Errors『間違いつづき』という初期の喜劇(1594)が上演され、立ち見席なら5ポンドで入場できることが分かったので観劇することにしました。せりふが断片的にしか分からず、ほかの観客が爆笑しているときに、笑えないのがつらかったのですが、大体の筋やジェスチャーから笑える部分もあって、おもしろい経験だったと思いました。リチャードさんにこのことを言うと、It's crazy! と言われてしまいましたが、事前に十分下調べをしていれば、けっこう楽しめたと思いました。ただし、この劇場の中央部分には屋根がないため、屋外劇場に近いことから、上演期間は5月から9月までとなっているそうです。

(5)フランスとイギリスの交通事情・・・・・・リチャードさんの運転でロンドン郊外を走ったときと、フランスでレンタカーを借りて運転したときの経験から両国の交通事情をご紹介します。

郊外には信号はほとんどないため、止まる必要がほとんどない・・・・・・郊外の地方道を走っていると信号がほとんどないため、止まる必要がほとんどありません。これは、交差点がちょうどパリの凱旋(がいせん)門の周りの道路のように、ドーナツ型の道路(フランスではロン・ポアンRond-point、英語ではRoundaboutと言うそうです)になっているためです。このドーナツの中では必ず一定の方向(右側通行のフランスでは反時計回り)で走りますが、ドーナツに進入するときには、ドーナツの中を走っている車に優先権があるため、減速または停止する必要が生じることもあります。ただ、いなかの道の場合には、走っている車が少ないため、ちょっと減速するだけで、通過できる場合がほとんどです。さらに、この交差点の優れた点は、どの道に入ったらいいのかがはっきりしない場合には、ドーナツの中を何回でも回れるという点です。知らない場所を走っている場合には、この特徴が非常に役立ちます。

フランスの高速道路の制限速度は時速130キロ・・・・・・フランスの高速道路での乗用車の制限速度は130キロメートルです。主要自動車専用道路(Autoroute)は3車線以上で、右端の車線を制限速度が90キロらしい大型トラックが時速100キロくらいで走っており、2番目の車線を一般の乗用車が140キロくらいで走っているようです。一番中央寄りの車線は追い越し車線で、この車線だけを走り続けている車はあまりありませんでした。時速200キロくらいで走っている車もありますが、その場合でも追い越したあとは律儀(りちぎ)にもとの車線に戻ることが多いようです(どうも交通ルールでなるべく右に寄るように決まっているような感じです)。高速車と低速車がうまく共存しているという感じで、いろいろな車線をジグザグに走って追い越していくような車や、中央寄りの車線を高速で走行する大型トラックも見かけませんでした。そのためか、1,900キロも走ったにもかかわらず、事故車は1台も見かけませんでした。ただ、時速140キロくらいで走っていても、車間距離を平気で数メーターまで詰めるのにはあきれました。結構、みんな詰めているようで、よく事故にならないものだと感心 しました。

また、高速道路料金はイギリスでは無料でフランスでは日本の3分の1程度という感じで、例えばニームからパリまで約700キロ(地図上での距離ですので実際はもっと長かったと思います)の高速道路料金は合計で240フラン(4,400円程度)でした。これに対して距離が700キロ強の東京から青森までの高速道路料金は1万4,000円もします。

高速道路で感心したもう一つの点は、道路に凹凸がほとんとないという点で、日本のように継ぎ目ごとにガタンゴトンと揺れるなどということはありませんでした。特に、完成直後の道路の場合にはタイヤと道路の摩擦音がほとんど聞こえなくなる感じで、ガラスか氷の上を走っているような感じでした。

どうも、道路交通網はイギリス・フランスの方がはるかに合理的に運営されているようです

(この見方に対する房枝さんのご意見)ドーナツ型の道路というのはRoundaboutのことだと思いますが、イギリスの場合は右から来る車に優先権があります。ラッシュの時にはなかなか入れなくてイライラします。運転免許のテストでも入るタイミングがつかめなくて失敗しやすいし、ルール違反をする車もあるし、私も大きい混んだRoundaboutに入る時、2度も後ろからぶつけられたし、大嫌いです。在英日本人の間でも評判悪いですよ。
信号のほうがよっぽど簡単でいいと思います。イギリスの高速道路が無料なのはすでに税金をがっぽり取られているからで、この点は旅行者に有利ですね。

(6)パリの安くておいしいレストラン2軒

問題11で紹介した「パリ旅の雑学ノート」のPART3という副題がついた「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男+大村真理子著、中央公論社刊)で見つけた「フツーのフランス人がフツーに食べているフツーのフランス料理」を出すというポリドール(Le POLIDOR, 41 rue Monsieur-le-Prince, 6e, tel 01 43 26 95 34)はお勧めです。創業は1845年で、かつての常連客には、ヴェルレーヌ、ランボー、ヘミングウェイ、ジッド、ヴァレリー、ジェームス・ジョイスなど世界文学の巨星が含まれています。「とっておきパリ左岸ガイド」によると、「・・・なによりも素晴らしいことは、100年以上経ってその間何人か経営者も替わっているのに、"安い、旨い、楽しい"という創業当社からのポリシーを今日まで一貫して守っていることだ」そうです。場所は地下鉄のCluny la Sorbonneから5分(300メートル)くらいのところです。かみさんと二人でいって、ディナーコース(オードブル、メインはメニューから選択します)、ワイン1本、デザート、コーヒーでチップ込みで300フラン(約5,500円)でした。かみさんはオードブルのほうれん草のサラダが非常においしいと言っていました。入った時間が早かったため、すぐに席が取れましたが、食事を終わる頃になると、入り口に10人くらいの行列ができていました。日本人のお客さんもけっこういました。

もう1軒はLe Sevigne(15 rue de Parc Royal 75003, Paris tel 42 77 00 98)です。ここはピカソ美術館に行くときに見つけた店で、美術館の入り口から50メートルほどしか離れていないため、ピカソ美術館に行かれる方にお勧めです。店の横のショーウィンドウのようなところに、タルト(キッシュ・ロレーヌとかほうれん草がいっぱい入ったもの、また魚介類の入ったもの、tarte a la mer)が飾ってあっておいしそうだったので入りました。席に着くと、店のおかみさんが今日のランチ(肉料理と魚料理)は何かを説明してくれました。私達は、かみさんがサーモンとほうれん草のタルト、私が魚介類のタルトにしました。タルトといっても厚さが5センチ、長さが20センチくらいもあるため、これだけでほぼおなかがいっぱいになりました。このレストランで感心したのは、すべてのワインをグラスでも注文できる点です。一般にフランス人ほどアルコールに強くない日本人の場合には、昼間から1本もワインを空けるともう結構出来上がってしまうのではないかと思います。そのためグラスで注文できるのは日本人にはいいと思いました。さらに感激したのは、みんなが注文していたため、私も注文したところ、店のおかみさんが「ほかのもあるよ」、みたいなことを言って、出し渋ったなしのタルト(tarte au poire)でした。これまでに食べたなしのタルトで一番おいしかったと思いました。かみさんの食べたクレーム・ブリュレも最高だといっていました。これにコーヒーを加えて、全部でチップ込みで330フラン(6,100円)でした。ランチとしてはちょっと高かった気もしますが、それだけのことはあったと思いました。

店はおばさん4人が、キビキビと仲良く切り盛りしている(調理場は2階で見えませんでした)ようで、パリのレストランのおかみさんの鏡のような感じのおばさん達でした。また、観光地に近いにもかかわらず、お客さんの半分くらいは地元の人らしく、店の人と結構親しげに話をしていて、いかにも地域に根付いたレストランという感じがしました。
(99年9月23日)。

房枝さんがポリドールに行かれたそうです・・・パリの雰囲気と味が東京で楽しめるレストランは?

2001年1月に房枝さんからメールをいただきました。メールによれば、1月9日から11日までパリに行かれ、上でご紹介したレストランのポリドールにも行かれたそうです。メールによれば、

「ホテルから近かったのでポリドールにも行きましたが、クレジットカードが使えないのも昔風ですね。(でもあせりました!)」

ということでした。あとからリチャードさんが撮したポリドールの前の房枝さんの写真も送ってくださいましたので、ご紹介します。

看板には、"CREMERIE RESTAURANT POLIDOR"と書かれています。辞典によれば、CREMERIE というのは、普通は乳製品販売店(牛乳、バター、チーズのほかに卵も売っているそうです)のことを指すそうです。また、昔はパリの比較的低価格のレストラン(というより食堂)のこともこう呼ばれていたそうですが、現在では、CREMERIE という言葉を普通のレストランの意味で使うことはなくなったようです。そのため、この看板はかなり古めかしいものということになります。

東京の下北沢にあって、フランス人が経営しているフランス料理店、TROCADERO (トロカデロ、電話 03-3467-1991)に、ある会合で3月2日に行きましたが、この店は、店の正面の感じがポリドールに似ていました。ただ、パリのレストランやカフェでは、写真のように、店の正面に縦長のガラス窓が並んでいることがよくあるようです。普通は、夏になると、縦長の部分を屏風(びょうぶ)のように折り畳んで、店を開け放して、道路側のテラスと店の内部がつながるようになっているようです。トロカデロもそうなっていましたが、ポリドールの場合には、窓は折り畳めないい感じで(夏に行ったときには、窓が外されていたかもしれませんが、忘れました)、ちょっと古めかしい造りのようです。トロカデロは料理はおいしいのですが、セット・メニューがないため、アラカルト(一品料理)から料理を選ぶことになり、普通に食べてワインを飲むと1人当たり5,000円くらいかかるようです。ただ、お金に余裕があって、パリの雰囲気を東京で楽しみたい方にはお勧めかもしれません。

東京でフランスの雰囲気を味わえるレストランとしては、JR、地下鉄東西線の飯田橋から5分くらいのところにある、日仏学院内の Brasserie Bernard (ブラッスリー・ベルナール、電話:03-3260-9639)があります(ただし、レストランの建物は全くフランス的ではありません)。こちらはコース・メニーが4,000円近くすると思います。日仏学院はフランス政府公認の語学学校で『現代フランスを知るための36章』(梅本洋一、大里俊晴、木下長宏他著、明石書店)によれば、「日本で一番フランス的な場所」だそうです。学院内では、フランスのテレビ番組をいつでも見ることができるほか、フランスの書籍、新聞、雑誌を主に販売している本屋の「Rive Gauche」(リーブ・ゴーシュ、つまりカルチエ・ラタン、サンジェルマン・デ・プレ、モンバルナスのある、パリのセーヌ川左岸のこと)もあります。

東京の安くておいしいフランス料理店としては、地下鉄東西線の神楽坂から5分くらいのところにある、Brasserie Gus (ブラッスリー・グー、電話:03-3268-7157、昼は1,000円くらい、夜は、ワイン、前菜、メイン、デザートのセットで 3,000円弱のコースだけです、コーヒーは別料金です)、同じく地下鉄東西線の高田馬場から5分くらいのところにある La Dinette (ラ・ディネット、電話:03-3200-6571、料理と費用はブラッスリー・グーと同程度です)がお勧めです。(2001年3月4日追記)

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