「一人一票」という民主主義の基本原則を踏みにじった二人の最高裁裁判官〔投票用紙の右から3番目の涌井紀夫(わくい・のりお)氏と6番目の那須弘平(なす・こうへい)氏〕には国民審査でノー(×印)の意志表示を!

政権交代の可能性がある(2009年)8月30日の衆議院議員選挙の際には、最高裁判官の国民審査も行われます。国民審査で投票者の過半数が×印を付けると、その裁判官は罷免されることになっています。ところが、この制度は、どの裁判官かどんな判決を下したかについての情報が十分には提供されてないため、現実にはほとんど機能しておらず、罷免された裁判官はまだいないそうです(Wikipediaの「最高裁判所裁判官国民審査」の項)。

ところが、今回は「一人一票実現国民会議」( 発起人にはなんと長島一茂さんも含まれています)という団体が、8月25日付『朝日新聞』朝刊に意見広告を載せ、重要な情報を提供してくれました。この広告は、例えば日経新聞には載っていませんでしたので、ご覧になっていらっしゃらない方も多いかと思って、広告の内容をご紹介します。

現在の日本の選挙制度では、おそらく地方を地盤とする自民党に都合のいいように、都市の住民と地方の住民で選出できる議員の数に大きな差があります。例えば、衆議院議員選挙で、高知3区の住民の1票の価値を1とすると東京3区の1票の価値は0.5に過ぎないそうです(つまり、東京都のある有権者数で、議員1人が選出できるとすると、高知県では同じ有権者数で議員2人が選出できることになります)。参議院議員の場合はもっとひどいことになっていて、価値が最も高い鳥取県の1票の価値を1とすると、東京都の価値は0.2になるそうです(つまり、東京都で1人の議員を選出できる有権者数が鳥取県で投票すると5人も議員を選出できることになります)。ご自分の選挙区の一票の価値は「一人一票実現国民会議」のホームページ(http://www.ippyo.org/ )で簡単に調べることができます。

そのため、衆議院では、全有権者の42%が小選挙区選出議員の過半数を選出し、参議院ではわずか33%が過半数の選挙区選出の議員を選出しているそうです。さらに、これら議員によって、総理大臣が互選され、総理大臣は全国務大臣だけでなく、最高裁判事まで任命するため、「少数決で立法府も行政府も司法までが決定されてしまうのです。一人一票が保証されなければ民主主義の原則の多数決とは言えず、この国は民主主義国家とは言えないのです」と意見広告には指摘されています。

これに対して、米国連邦最高裁は、1983年に、連邦下院議員選挙で、1票の価値が1対0.993というわずかな差でさえ「憲法違反により無効」という判決を下したそうです。意見広告によれば、「日本の技術力をもってすれば、日本でも1票対0.993票まで、一票の不平等を是正できる」そうです。

今回国民審査にかけられる9人の裁判官のうち、投票用紙の右から3番目の涌井紀夫(わくい・のりお)氏と6番目の那須弘平(なす・こうへい)氏は2007年の最高裁判決で、当時の「一票の不平等」を定める公職選挙法の規定を「有効」と判断したそうです。これに対して、右から4番目に書かれている田原睦夫(たはら・むつお)氏は、「憲法の趣旨に沿うものとは言い難い」と反対意見を述べたそうです。

このような情報が国民全体に伝わっているとは言い難い状態ですから、民主主義の基本原則を踏みにじった二人の裁判官を罷免するのは難しいでしょうが、この制度がいくらかでも機能し始めたことが分かるだけでも、将来の民主化への第一歩になるという意味で重要な変化となるのではないかと思います(2009年8月26日)。

上の表は意見広告に載っていた表に×印を付けたものをコピーさせていただきました。

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