今年(99年)9月にビアリッツのホテルの窓から明け方に撮った写真です。ビアリッツはフランスの大西洋岸のスペイン国境まであと20kmのところにある海水浴場で、アメリカの旅行案内書(Flommer's
99)によれば、世界で最も有名な海岸リゾート地の一つだそうです。
ナポレオン3世が、スペイン出身のウージェニー皇后のために1854年頃に建てた別荘が、1893年にホテルになって以来現在までホテルとして営業しています(Hotel
du Palais、写真右手のライトアップされた建物)。このホテルは、イギリスのビクトリア女王、エドワード7世が訪問されたことでも有名だそうです。Hotel
du Palaisはとんでもなく高いという話なので、三つ星の比較的安いホテル(Windsor
Hotel)に2泊しましたが、海岸沿いで見晴らしのいいところでした。
写真からも分かるように、波が高いため、サーフィンに適した海岸としても有名だそうです。この写真に映っている海岸は、サーフィン専用で朝から多数のサーファーが波に挑戦していました。画面には映っていない左手のごく狭い範囲が、海水浴場になっています。私も泳ぎましたが、波が非常に高く、日本だと遊泳禁止になると思いました。水に入っている人は、泳ぐというより、波と格闘しているという感じでした。しかも、ちょっと油断すると、遊泳可能地域外まで流されてしまい、結構スリル満点でした。数百メーター離れた場所にある入り江も海水浴場になっていて、こちらではゆっくり泳げそうでした。
ビアリッツに行くことにしたのは、ここがエリック・ロメールの「緑の光線」という映画の舞台になっていて、きれいなところだと思ったことが一因になっています。「海底2万哩」の著者のジュール・ベルヌの作品に「緑の光線」というのがあり、その小説によれば、日没直後に太陽の光が緑色になる一瞬があり、幸運にもこの緑色を見た人は、人の心の中が分かるという言い伝えがあるそうです。エリック・ロメールの「緑の光線」という映画の方は、パリで働く情緒不安定の若い女性が、バカンスでビアリッツに来て、恋人を探すというお話です。最後に駅で偶然知り合った男性とともに海岸にいって日没を見て、「見えた!」というところでこの映画は終わっています。ところが、私がビデオを何度巻き戻して見ても、緑の光線は見えませんでした。情緒不安定な女性の思い込みだったという設定のようです。
上の写真はやはり今年訪問したイギリスのコッツウォルズ地方のバイバリー(Bibury)というところです。19世紀の芸術家で詩人、社会主義者でもあったウィリアム・モリスは、この村に住んでいたことがあり、この村のことを、「イングランドで一番美しい村」と形容したそうです。写真に映っているのは左から、かみさん、かみさんの友人の房枝さん、房枝さんのご主人のリチャードさんです。房枝さんとリチャードさんについては、「10年ぶりに海外旅行に行って来ました」にもご登場いただきました。
私は最初、オックスフォードとシェークスピアが生まれたストラトフォード・アポン・エイボンに行きたかったのですが、ストラトフォード・アポン・エイボンは「全くの観光地で、古い家が1軒あるだけでなんの面白みもないところだ」(注:古い家とはシェークスピアの生まれた家のことです)というリチャードさんの強い勧めがあり、向かいの下宿屋のおじさんも全く同意見だったこともあって、コッツウォルズに連れて行っていただくことになりました。コッツウォルズの魅力は自然が残っていることと、何百年も前の家が軒を連ねている点でした。なぜ、古い家が残っているのかと言えば、産業革命よりもはるか前から、この地方は羊毛産業で栄えていたため、立派な家を建てることができたという要素が大きいとリチャードさんが教えてくれました。
下の写真は、同じ場所から対岸の方を撮ったものです。中央の建物が「スワン・ホテル」というコッツウォルズを象徴するようなホテルで、川には白鳥もいましたが、カモの親子はすぐ足下まで近づいてきました。
(99年10月13日)
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