ぶなの原生林を流れる霧

1993年にユネスコの世界遺産に登録された白神山地の「二ツ森(ふたつもり)」の山頂付近で2007年6月に写したものです。『白神自然観察ガイド』(根深 誠著、山と渓谷社刊、101ページ)によれば、「白神のなかで最も手軽に山頂を踏めるのが、この二ツ森である。毎年、万単位の数の登山者が押しかける。青森と秋田の県境でストップした青秋林道(せいしゅうりんどう)の終点に登山口がある。/青秋林道が県境でピタリとストップしているのは、そこから先が青森県で、青森側の住民運動によって、建設工事がストップさせられた、という経緯がそこには秘められている」そうです。下の写真が、登山口の近くにある、林道の終点です。晴れていると、登山口から二ツ森山頂が見えるはずでしたが、雨天で霧がかかっていたため、視界は100mくらいしかありませんでした。登山口から200mくらい歩くと、世界遺産地域の緩衝地域(683ヘクタール)に入り、約1km(約1時間)の距離にある二ツ森山頂は緩衝地帯と核心地域(1万139ヘクタール)の境界となっています。

『白神自然観察ガイド』の17ページに、ブナの木についての説明がありましたので、少し長くなりますが、ご紹介します。

ブナの分布する地域はブナ帯とよばれ、多雪地帯とほぼ重なり合う。半年近くも積雪に閉ざされるという特殊な気象条件を好む日本のブナは、日本固有の植物だ。/かつては東北を中心に各地で見られていたこの森は、戦後復興にともない木材需要で大規模に伐採された。しかし、幸いにも白神のブナの森は世界最大級の広がりをもって残されることになる。/ブナの森は、落ち葉が堆積してできた腐植土(ふしょくど)がスポンジのように雨水や雪解け水を貯えるので、「天然の水ガメ」だとか「緑のダム」などといわれる。そこから流れ出す川は、下流域の田畑を潤し、やがて海に注いで、魚類や海草類にも滋養分を与える。

下の写真は、入山手続きをした、「八森ぶなっこランド」の近くで写したものです。

下の写真は、青秋林道と「一の又沢」が交差する地点で、林道から写したものです。


白神山地の貴重な自然が守られることになったのには、青秋林道建設反対運動の盛り上がりが重要な役割を演じたようですが、反対運動の詳細については、青森市の日刊紙「東奥日報」のWeb版、「東奥Web」( http://www.toonippo.co.jp/ )の中の、世界遺産白神山地/概要(http://www.toonippo.co.jp/kikaku/shirakami/gaiyou.html )というページの「白神山地はなぜ守られたか」という部分に詳しく紹介されています。下に、その最後の部分をご紹介させていただきます。

『青秋林道建設反対運動が起こった当時、林野庁の手で林道計画が自動的に廃案になるとはだれもが予想していなかった。ましてや世界遺産にまで“出世”するとは、考えも及ばないことだった。ふるさとの原生林を守りたい、という素朴な気持ちで地元から うまれた保護運動。この小さな芽が全国の世論を動かし、ついには国や世界を動かしたのである。このような例はかつて無く、「白神」はわが国自然保護運動史に歴史的な1ページを記した。
 振り返ってみると、白神の保護運動は、時の流れとうまく一致した、といえる。緑の減少に比例するようにモノがあふれる現代社会。その社会に「白神」は問いを投げかけた。そして県民、国民は「自然を残しておきたい」と白神の保護運動に共鳴した。これを受けて林野庁は、従来の森林施業方針を大転換させることになった。つまり「白神」は、自然保護を尊重する時代を自らつくり、そして自らがその流れに乗った、といえる。』

また、東奥Webの「リンク/趣味/その他」というページ( http://www.toonippo.co.jp/link/g_hobby.html )には、「クイズひまつぶし」も、「足しげく通えば雑学王も夢ではないかもしれません」と紹介していただいております。どうもありがとうございました。紹介していただいているために宣伝させていただくのではありませんが、東奥Webは、新聞の売り上げに水をささないために、出し惜しみしている感のある全国紙のWeb版よりも充実しているのではないかという感じがします(2008年6月21日)。

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