問題 17 (レジャー)の答え・・・競馬でもうけようとしたA氏の手元に残るのは、元手の4分の1弱の c.約24万円です。宝くじで一獲千金を夢見たB氏の手元には平均的にみて、元手の約50分の1に相当するf.
約2万円しか残りません。
競馬ファンのA氏の場合・・・競馬ファンが中央競馬会(JRA)のレースの馬券を買った場合、支払った金額(売得金というそうです)のうち、当たり馬券の払い戻しに充てられるのは、75%だけであるため、競馬ファンは全体として、馬券購入のたびに、25%分だけ損をしている勘定になります。ちなみに、この25%のうち10%は国庫に納付され、15%はJRAの運営費や剰余金となります。
25%というとあまり大きな比率ではないかと考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、馬券を買うたびに確実に損をするわけですから、馬券を何回も買うと、この損が積み重なることになります。
A氏のように、5レースも連続して買うと、平均的にみて、
元手×(0.75)×(0.75)×(0.75)×(0.75)×(0.75)=元手×0.237≒元手×0.24
しか残らないことになります。元手が100万円だと、手元に残るのは約24万円となります。
競馬ファンは、いろいろな情報を見て判断してしてから馬券を買うので、自分だけはそんなに負けるはずはないと考えているに違いないのですが、これは無駄な抵抗でしょう。そもそも、競馬ファンが自分で調教師や騎手から直接調査するのは不可能ですし、頼りにしている情報源の中には、かなり怪しげなものもあるのではないでしょうか。もし、予想屋が確実な情報を持っていたとしたら、その情報は人に知らせずに、自分で馬券をできるだけ大量に買った方が有利であるはずです。つまり、予想屋というのは、自己矛盾をはらんだ職業だということになります。
競馬を楽しむだけなら結構ですが、競馬で持続的にもうけるのは不可能でしょう。実際、競馬で家を立てたなとどいう話は聞いたことがありません。
宝くじファンのB氏の場合・・・宝くじの場合には、当選金に充てられるのは、くじの代金の46.2%にすぎません。残りの53.8%のうち39.5%は地方公共団体に、2.9%は日本宝くじ協会に支払われ、4.1%は宝くじの印刷、宣伝、抽選会開催費用などに使われ、7.3%は売りさばき手数料、当選金支払い手数料として、宝くじを売っているおばさんなどに支払われるそうです(第一勧業銀行、宝くじ部から取材)。
そのため、競馬と同様に計算すると、5回連続で宝くじを買うと、
元手×(0. 462)×(0.462)×(0.462)×(0.462)×(0.462)=元手×0.021≒元手×0.02
しか残らないことになります。元手が100万円だと、手元に残るのは約2万円となります。
宝くじファンは、「夢を買う」などと言って、一獲千金を夢見ているのかも知れませんが、これも賢い選択とはいえません。私は宝くじを買ったことがないため、詳しいことは分からないのですが、例えば100円のくじで1億円の当選金が支払われたとしましょう。1億円を支払うためには、上で書いたような事情から、2億円以上、つまり1枚100円として、200万枚以上の宝くじを売る必要があります。逆に考えると、1億円に当選するのは、200万分の1以下だということになります。また、当選金は、1,000円、1万円などとほかにもありますから、確率は200万分の1より相当小さいと考えられます。
エミール・ボレル著「確率と生活」(文庫クセジュ、白水社刊)によれば、100万分の1という確率は、「人間的尺度において無視できる確率」であるとされています。つまり、普通の人にとって、あり得ないと考えて差し支えない確率であるということです。
例えば、1日のうちに交通事故で死ぬ確率は、日本の交通事故による年間死者数を9,000人として、これを365日で割って1日当たりの死者数を25人と求め、これを日本の人口の1億2,500万人で割ると500万分の1となります。つまり、日本人が1日のうちに交通事故で死ぬ確率は500万分の1となります。
100円の宝くじで1億円が当たる確率は200万分の1よりかなり小さいため、おおざっぱにいって、1日のうちに交通事故で死ぬ確率と同じ程度と考えられます。1日のうち交通事故で死ぬことを気にして、家にこもるとか、外出を控えるなどということは考えられないのと同様に、1億円が当たることを期待するのも意味のないことです。
レジャー白書'97(財団法人余暇開発センター刊)は、「日本は世界最大のギャンブル国家である」と指摘しています。同書によれば、96年のパチンコ、公営ギャンブルなどのギャンブル型レジャーの市場規模は33兆4,900億円と国家予算の半分近くに達しています。
96年のギャンブル型レジャー産業の売上高(単位:億円)
パチンコ | 宝くじ | 中央競馬 | 競艇 | 競輪 | 地方競馬 | オートレース | 合計 |
243,660 | 7,470 |
39,860
|
18,480 | 15.760 |
6,960
|
2,710
|
334,900 |
白書では、「この消費規模は、正確な統計はないが、おそらく世界一だろう」と指摘しています。海外には存在しないパチンコだけで、全体の73%を占めていることがまずその異常性を物語っています。全体の14%を占めるにすぎない競馬(中央競馬と地方競馬を合計した4兆6,820億円)については海外の市場規模のデータがあるので比較することが可能です。96年の競馬の市場規模は、米国では1兆2,000億円、近代競馬発祥の地である英国では約7,000億円にすぎません(イミダス'98、1224ページ)。つまり、米国の市場規模は日本の3.9分の1、英国の場合は日本の6.9分の1となります。人口1人当たりの競馬市場規模は、日本が3万7,500円、米国で4,650円、英国では1万2,030円と、日本人は1人当たりでみると、米国人の8.1倍、英国人の3.1倍も競馬にお金を使っていることになります。
ギャンブルについての最大の問題はパチンコでしょう。パチンコについての問題は、市場規模が巨大であること、その経理が公開されていないため不透明であること、さらに警察OBがパチンコ関連業界に多数天下りしていること、また、つかの間の気休めのために、親が幼いわが子を車内に放置して遊んでいるうちに、子供が熱中症で死亡したり、誘拐されるという事件が後を断たないことなど、数え切れません。
競馬や宝くじについては、賭博のルールが確立しており、元手の何%が戻ってくるかが、公開されていますが、パチンコの場合は、いわば「無法地帯」で、何%賞品を出すかについては、各パチンコ店にまかされているようです。パチンコ店の業界団体である、日本遊戯事業協同組合連合会によれば、払い戻し率は一応90%をめどとしているが、全国的な払い戻し率のデータはないそうです。しかも、払い戻し率にはパチンコ店ごとに大きなばらつきがあるそうです。
昔のパチンコは「釘師」が釘を微妙に調整することによって、出玉を調整していましたが、今では、電子的な操作で簡単に調整できるようになったため、パチンコ店はいわばもうけ放題になったようです。
パチンコ・ファンはこの辺の事情(つまり、相手がルールを決めていて、しかも、そのルールがどうなっているかは知らされていないにもかかわらず、無謀な戦いを挑んでいること)をもっと冷静に判断してプレイした方がいいのではないでしょうか(というより、お金と時間、特に子供と過ごす貴重な時間をどぶに捨てるのはやめた方がいいのではないでしょうか)【98年4月26日】。
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