問題33 (経済)の答え…(c. 赤字なのでマイナス)となっているが正解です。

PERは最も標準的な株価の評価尺度

日本人が株式投資をする場合には、理論的にみて現在の株価が割安かどうかよりも、最近その株が市場で人気化しているかどうかに注目する場合が多いようです。しかし、長い目でみると、理論的にみて割安な株を買って長期間保有する方が有利であるということが、アメリカ市場については、はっきりしているようです。

株価が割安かどうかを評価する尺度のうちで、最も一般的なのが、株価収益率(PERとも言われます)です。PERは1株当たり(年間)利益に対する株価の倍率を示しています。なぜ、利益と株価を比較するかというと、株価を理論的に推定した値は、近似的に現在の利益の何倍という形で表すことができるからです。この式の形から、一般に、高い成長が期待できる企業のPERは高く、低い成長しか期待できない企業のPERは低いことがわかります。

PERを数式で表すと、、

   PER=株価/1株当たり利益 

となります。さらに、この式の分子と分母の両方に、その会社が発行しているすべての株式の数(発行済み株式総数)を掛けると、

   PER=(株価×株式総数)/(1株当たり利益×株式総数)
   =株価の合計/利益

と表すこともできます。
市場全体のPERは最後の式を拡大解釈して、

   市場全体のPER=(市場全体の株価の合計)/(市場に株式を公開している企業の利益の合計)

と表すことができます。株価の合計は「時価総額」と呼ばれています。そのため、

   市場全体のPER=市場全体の時価総額/市場全体の利益の合計 ……(式1)

と表されます。
ニューヨーク株式市場のPERが30倍であるというのは、市場の時価総額が市場に株式を公開している企業(上場企業)全体の利益の30倍に達しているということを表しています。

「日本株式会社」は2期連続で赤字

東京市場全体のPERは日経新聞に毎日掲載されています。4月13日のデータを4月14日の日経新聞の市況欄の一部からから下にコピーさせていただきました。
この表で@と書いてある部分は、東京証券取引所で主要銘柄が取引されている、市場第一部を表し、Aと書いてあるところは、比較的小さい企業が取引されている、市場第二部についてのデータであることを表しています。

東京市場(この場合、市場第一部のこと)の株価収益率(PER)は右列の上の部分で、@全銘柄と書いてあるところです。

この行の左側の列の上には「前期基準」と書いてあります。これは、実績が発表されている最も最近の業績に基づいて計算されているという意味で、右側の「予想」は「前期基準」の次の期の業績予想に基づいて計算されているという意味です。

@全銘柄のPERは、「前期基準」(3月期決算の場合には98年3月期)でも「予想」(3月期決算の場合には99年3月期)ベースでも、ともに、数字が書かれておらず、「―」というマークが入っているだけです。この記号の意味についての説明が一番下に「一部企業の赤字決算の影響で異常値になっているため」であると書いてあります。

「異常値」という言葉が使われていますが、これが「異常」なことなのかどうか、東京証券取引所の調査部に電話でお聞きしました。担当者の方によりますと、上場企業全体の利益の合計が赤字になるというようなことは、日本を含めた主要国では聞いたことがなく、おそらく、これまでには例がないのではないかとおっしゃっていました。しかも、前期、予想期と2期連続で赤字となっています。

どの程度の赤字かも、この表から計算できます。株価収益率の下の行に、株式益回りという行がありますが、これは株価収益率の逆数(つまり1/株価収益率)のことです。また、市場全体の時価総額も一番左上に載っています。まず、式1を変形すると、

   市場全体の利益の合計 = 市場全体の時価総額/市場全体のPER
                  =市場全体の時価総額×市場全体の益回り
                  = 347兆円 × (-0.0013)
                  = -0.45兆円 ……(前期基準、予想ベースでは -2.5兆円)

となり、東証第一部で取引されている企業(上場企業)全体の利益を合計すると、「前期」は0.45兆円、「予想期」は2.5兆円という巨額の赤字になっていることが分かります。ただ、銀行の支援のために、用意された公的資金の60兆円に比べれば、大した額ではありません。

株価が急上昇して、市場に参加する投資家も増えていますが、日本の市場は「異常」な状態にあるため、投資される場合は慎重にされることをお勧めします(99年4月15日)。

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