問題37 (日本語)正解は(b.再演)ですが、正解された方はNTTの職員の方ではありませんか。(c. 再発)と解答された方は、この場合は誤りですが、普通の日本語感覚をお持ちの方だと思います(99年6月27日)。
この文書はNTTのホームページのニュース・リリースというところに載っているもので、URLはhttp://www.ntt.co.jp/news/news99/9906/990603.html(URLの上をクリックするとNTTのホームページが表れます)です。そもそも、5月10日にNTT支店の社員が逮捕された個人情報漏洩(ろうえい)事件についてのおわびのメッセージが1カ月近くも経ってから発表されるというのも、間の抜けた話です。私がこのページを見つけたのは、このページが掲載された日の翌日に当たる6月4日の朝でした。この文章の「再演防止策」というのは、「再発防止策」の誤りではないかと思い、NTTの窓口に問い合わせましたところよく分からないので、担当部署に連絡しておくというお話でした。
広辞苑によると再演というのは「同じ芝居などを再び上演すること、また、同じ役で再び出演すること」で、「5年ぶりに再演する」という例文が載っていました。不祥事が再び起こることは普通の世の中では、再発と言い、再演ということはあり得ないと思います。
わざわざ、ご連絡申し上げたにもかかわらず、6月27日現在でも、この個所は依然として「再演防止策」となっています。NTTが社長名で出した、正式文書で、日本語としては意味の通じない言葉が使われており、その指摘を受けたにもかかわらず、24日経った現在でも訂正されていないのは、次の二つのことが原因になっている可能性があります。
第一の可能性…私の指摘が無視された。大きな組織ならどこでもありそうですが、社長名のこんなに短い文書に誤りがあって、その指摘を受けた窓口の社員が、そのことを、あまり重視せずに、無視したか、広報部門まで伝えられたにもかかわらず、あまり大きな問題と考えられなかったために無視された可能性があると考えられます。また、自社のホームページを多数の社員が見ていたと思いますが、責任ある立場の人が、見ていなかったか、または、その間違いを発見できなかった、または発見しても指摘しなかった。つまり、典型的な大企業病の症状である可能性があります。
第二の可能性…不祥事の再発をNTTでは、「再演」と言っている。こちらの方がはるかに重症なのですが、へたをしたら「再演」はNTTの社内では、「再発」の意味で使われているのではないかという気もします。そのうち、NTTの社員の方に聞いてみようと思っています。ただ、社内の管理部門の「方言」という可能性もあるので、聞いても分からない可能性もあると思います。
NTTの民営化を進めたものの、その後リクルート事件で社長を辞任した、真藤恒 元NTT社長は、かつて社員に「電電語」は使うな(つまり、「日本語を使え」)と言っていたというのは、有名な話です。ところが、「電電語」は85年の民営化後14年も経っているのにまだ残っているようです。例えば、一般電話加入者の支払う通話料などの、一般企業の売上高に当たる収入のことを、NTTでは、「営業収益」と言っています。売上高と言わずに、営業収益というのは、公社時代の名残(なごり)ですが、一般の人にとって、「営業」と「収益」を組み合わせて、売上高になるとはちょっと想像できないのではないでしょうか。会計学の方でも、「収益」というのは普通は「利益」とほぼ同義語で、売上高のことを収益というのは、大ざっぱな話をするときだけだと思います。それでも、公式な財務諸表に営業収益という言葉を使い続けているところが、いかにも「お役所以上にお役所的」と言われるNTTならではの発想という気がします。〔2013年12月25日追記:売上高という意味で「営業収益」という言葉を使う企業は、現在ではかなりの数に上っているため、NTTのお陰でこの言葉は会計用語になったようです〕
公社的な発想が残ったままで、99年7月からは、持ち株会社方式に移行する(日経新聞では「分離・分割」などと言い、NTTではこれを「再編成」と呼んでいます)ようですが、利用者の方を向いた経営になるには時間がかかりそうな気がします(99年6月27日)。
この事件には多数のNTT社員が関与していた可能性が強いようです(99年7月4日追記)
問題で引用させていただいたNTTの「お客様情報漏洩事件について」では、漏洩していたのは1人のように書かれていますが、多数の社員が関与していた可能性が強いようです。
『朝日新聞』(99年7月2日付朝刊)の一面トップに、「NTT顧客情報 大量流出」という記事が掲載されました。これは朝日新聞のスクープのようです。この事件は大きな広がりを見せています。朝日新聞の調べによれば、流出した情報には、契約者の住所、氏名、生年月日だけでなく、料金引き落とし口座の番号なども含まれているそうです。また、NTTとNTTドコモの顧客情報を仲介している業者が数十社(人)あるそうです。これら業者は、ホームページや雑誌に「電話番号から住所や氏名を調べます」などの広告を載せ、注文を電子メールで受け、数日で情報を提供して、1件当たり5,000円から10万円前後の情報料を受け取っているそうです。
顧客情報は社外秘ですが、顧客情報を引き出せる端末がNTTで3万台、NTTドコモでも1万5,000台もあり、管理が不十分になっているようです。例えば、ある仲介業者は、NTTドコモで派遣社員として働いていた知り合いの女性から、「どこかに売れないでしょうか」と言われたのがきっかけでこの世界に入ったと言っているそうです。その業者の話では、「こういうことをやっている社員は多いと聞く」そうです。
NTTは意味不明のコメントを発表するより前に、事件のことをもっと詳しく調べる必要があるのではないでしょうか。
「再演防止策」はやはり「電電語」でした(99年7月27日追記)
6月25日付のNTTの「お客様管理の今後の対策について」(URLはhttp://www.ntt.co.jp/news/news99/9906/990625b.htmlですが、ここをクリックすると表れます)というニュース・リリースに「再演防止」と「再演防止策」という表現があるのを見つけました。やはり、「再演防止策」は「電電語」だったようです。
この件についてNTT社員の方からメールをいただきました(2006年3月21日追記)
2006年2月にNTT社員の方からこの件について、メールをいただきました。その方によれば、「再演」は歴史のある言葉で、どうも「事件や事故ではない」ということを意味するようです。詳しくは、「最近気付いたこと」の「NTTではなぜ「再発」のことを「再演」と言うのかについて、NTT社員の方からメールをいただきました」をご覧ください。
2013年末現在でも、まだ使われているようです(2013年12月25日追記)・・・詳しくは、「最近近気付いたこと」の「NTTは電電公社時代の隠語を民営化後28年経った現在でも公式文書に使っており、そのことに全く疑問を感じていない(2013年12月25日付)」という記事をご参照ください。
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