問題69(健康)の答え・・・村上氏が血糖値を下げる効果があることを発見したのは、(a. 漫才を聞いて笑う)ことです。

漫才を聞くことの効果の検証

『生命のバカ力(いのちのばかぢから)』(村上和雄著、講談社+α新書)によれば、「漫才を聞いて笑う」ことに血糖値を下げる効果があることを証明するための実験は2003年1月12日と13日の2日間にわたって、村上先生が理事をされている国際科学振興財団と「お笑いの総合商社」と呼ばれているらしい吉本興業の共同作業で行われました(
同書192ページ以下)。実験は、25人の糖尿病患者(同じ種類の被験者の方が、結果の信頼性が高まるので糖尿病の9割を占めるII型の患者の方々だけに参加していただいたそうです)に、B&B(ビー・アンド・ビー、漫才ブームのときに絶大な人気を誇ったペアで、63歳という被験者の平均年齢を考慮して、このペアの漫才を採用したそうです)の漫才の実演を昼食直後の50分間だけ見ていただいて、昼食前と公演後の血糖値の変化を調べるという方法で行われました。

25人の患者の方に、教室などで漫才をビデオで見ていただいても、あまり盛り上がらず、実演の方が効果が大きいと考えられた村上先生は、この実験のために、1,000人収容のつくば市のノバホールを貸し切られ、手をつくして、"盛り上げ役"の観衆を1,000人近く集めるのに成功されました。漫才公演は13日に行われましたが、患者の皆さんは、比較のために12日には、やはり昼食直後に医学部の助教授の糖尿病のメカニズムになどについての、かなり専門的な講義を、同じく50分間受けられて、昼食前と講義終了後の血糖値が比較されました。この二日間、食事などの日常生活は同じで、違っているのは講義と漫才だけという条件が整えられたそうです。

昼食直後50分間の行動 昼食前に比べた血糖値の上昇幅
(血液100ミリリットル当たり、平均)
糖尿病についての専門的な講義を聞く 122ミリグラム
B&Bの漫才を聞いて笑う 77ミリグラム
(差) (45ミリグラム)

また、講義を受けた場合の血糖値の上昇幅は、普段と変わりがなかったそうですので、講義の方は血糖値には影響しなかったようです。さらに、漫才公演後の聞き取り調査で、漫才が「とてもおもしろかった」と答えた患者さんのほうが、「そこそこにおもしろかった」と答えた患者さんよりも、血糖値の下がり方が大きかったそうです。この結果は、アメリカ糖尿学会誌(ダイアベーティス・ケア)で発表され、その直後、ロイター通信を通じて全世界に発信されたそうです。

さらに先生は、笑いが血糖値の低下につながるメカニズムも解明されようとしています。血糖値を下げる効果のあるホルモンとしてはインシュリンがよく知られています。先生によれば、「血糖降下遺伝子A」というものがあり、笑いによってこの遺伝子が活性化されることによって、インシュリンなどの血糖値を抑制するタンパク質がより多く作られたと考えられるそうです。そのために「遺伝子が目覚めている(活性化されている)かどうかがわかるDNAチップ法という新しい検査方法を使い、1500種の遺伝子を調べています。まだ予備的な結果ですが、笑いによりON・OFFする候補遺伝子の見当がつき始めています。これを糖尿病患者に応用するための、本格的な実験の準備をはじめているところです。2003年度中には、その結果の第一報を出す予定」だそうです(205-206ページ)。第一報の内容が分かりましたら、ご報告させていただきます。

笑いは副作用のない最良の薬

同書193-194ページによれば、「西洋では、『笑いは副作用のない最良の薬』と言われていますが、笑うことが健康によい影響を及ぼすだけでなく、病気の治療にも役立つことがあるということは、医療の現場でもかなり前から知られ、実践されてきました。たとえば、加療中のガン患者に喜劇や落語などを鑑賞してもらったところ、自然免疫の中心的役割をはたすNK細胞の活性が上昇したとか、アトピー性皮膚炎の患者に漫才のビデオを続けてみてもらったところ、症状に改善がみられたなど、非常に多くの臨床報告がある」そうです。

そのなかで、特に有名なのは、全身の激しい痛みを伴い、脊椎の硬直化、変形につながる膠原病(こうげん病)の一種である強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)という難病にかかり、医師から全快のチャンスは500分の1と言われたにもかかわらず、「笑うこと」と「疲弊(ひへい、疲れて弱ること)した副腎皮質への対応としてビタミンCの服用」を併用することによって完治させた米国の著名なジャーナリストのノーマン・カズンズ氏の話です(氏が50歳だった1964年の話です)。カズンズ氏は、「病院で投与されている薬をすべてやめて、人生の明るい面だけを考えるようにしようとの結論に達し・・・気持ちを明るく保つ方法として笑いを取り入れた・・・病室にユーモアあふれるコミック、映画やテレビ番組のビデオなどを大量にもちこみ、それを見ては意識的に大声で笑うようにした・・・10分間、腹を抱えて笑うと、少なくとも2時間は痛みを感じないで眠ることができた」(195ページ)そうです。

カズンズ氏のこの闘病体験は、12年後に、おそらく世界で最も権威があるとみられる、アメリカの医学専門誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」にも掲載され、医学界でも認知されたようです。この闘病体験は『笑いと治癒力』(ノーマン・カズンズ著、松田 銑(せん)訳、岩波現代文庫)に詳しく紹介されています。ノーマン・カズンズ氏は、1915年生まれで、1942年から1971年まで30年間も書評誌『サタデー・レビュー』の編集長をされただけでなく、キリスト教の一派であるクエーカーの信仰に裏付けられた進歩主義者として世界連邦運動、平和運動、核兵器廃止運動、環境汚染反対運動の先頭に立って活動され、1956年には「広島の被爆乙女」25人をアメリカに連れて行って、整形外科手術を受けさせたことが、当時日本でも大きく報道されました。残念ながらカズンズ氏は1990年に心臓発作で75歳で他界されましたが、『ロサンゼルス・タイムズ』誌の追悼記事には、死の2カ月前のある集会で氏が語った次の言葉が紹介されてたそうです(『笑いと治癒力』の193ページ)。

「重要なのはわれわれが生きている間に何を行うかである。人生の大悲劇は死ではなく、われわれが生きている間に、われわれの内面のものが死に絶えることだ」

(2004年3月27日)

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