わたしがベジタリアンになることにした五つの理由

問題76, 77、78、79を準備するために昨年末から、食肉についていろいろと調べました。その結果、ベジタリアンになろうと思うようになりました。その理由は、第一に、問題78(健康)でご紹介したように、肉食をやめることによって、ほとんどの生活習慣病にかかるリスクを大幅に減らすことが可能で、第二に、牛のような大型の動物は簡単には殺せず、極めてむごたらしいやり方で屠殺されているらしい、第三に、問題79(環境)でご紹介したように、地球規模でみると、畜産が砂漠化の主因となっているらしい、第四に、高価な食品のほとんどは畜産製品か魚介類であるため、ベジタリアンの方が安上がりで、第五に、野菜だけを食べていても栄養失調にならないということです。さらに、ガンジー、シュバイツァーなど、尊敬する偉人、特に非暴力の平和主義者の多くがベジタリアンであったのも発見でした。同時に、平和主義者なら、食べるために動物を殺すことにも、心を痛めるのは当然だろうということにも気がつきました。今回は上記の問題と答えで書き漏らしたことをご紹介させていただきます。

(1)、問題78(健康)でご紹介したように、肉食をやめることによって、ほとんどの生活習慣病にかかるリスクを大幅に減らすことが可能 --- 人間はもともと草食動物

なぜ生活習慣病にかかるリスクを大幅に減らせるかというと、人間はもともと草食動物だったためのようです。この点について『ぼくが肉を食べないわけ』(ピータ・コックス著、築地書館)の39-41ページから引用させていただきます。

『われわれ人類の祖先は東アフリカのリフトバレーに生まれたと科学的に証明されている。そこは現在乾燥地帯で人も住んでいないが200―400万年前は現在とは全く違っていた。草木が繁り、きれいな水をたたえた大きな湖があり、豊かな草原があった。川沿いには深い森林があった。/化石からみると、豆やナッツ類はすぐに手に入ったようだ。当時の人間の歯の化石模様は、今日ギニアにいるヒヒと同じ食事をとっていたことを示している。固い種子、茎、根、食物繊維など、むく、切る、噛むという動作が必要なものだ。また非常に大きな臼歯〔引用者追記:きゅうし、奥歯、以下同様〕と小さい門歯〔前歯〕があり、肉食には不向きだが、植物性のものを大量に食べるのには理想的であった。しかし約250万年前、大地は乾き始め、アウストラロピテクス人(猿人)は、この"エデンの園"を見捨て、サバンナで生き残らざるを得なかった。そこでは進化のための努力が必要になった。このときまで、人間の祖先が霊長類特有の肉を含まない食事をしていたのは疑いない。』

同書の43ページから引用させていただいた、霊長類と肉食獣の比較表を見ても、人間は肉を消化するのに向いていないことが分かります。

霊長類 肉食獣
食事をするのに手・足を使う 食事をするのにつめを使う 食事をするのに手を使う
歯は平ら 歯は鋭い 歯は平ら
腸は長い 腸は短い
腐った肉を素早く排出
腸は長い
肉は便秘の原因になる
体を冷やすのに汗をかく 体を冷やすのにあえぐ〔犬のように、せわしく呼吸する〕 体を冷やすのに汗をかく
水をすすって飲む 水をなめて飲む 水をすすって飲む
ビタミンCは餌からとる ビタミンCは体内でつくる ビタミンCは餌からとる
主に果物・ナッツを食べる もっぱら肉を食べる 食事は環境しだい
適応力が優れている
指でものをつかむ
道具・武器を使う能力あり
不器用 非常に器用
排泄物に不快臭はない 排泄物に不快臭 排泄物は食物しだいで不快臭あり
食事の回数は多く、少量ずつ 多量で不規則な食事 食事の量・回数は両面性
主に甘味を好む 塩分・脂肪分の多いものを好む 甘味および塩・脂肪の多いもの両方を好む
風味のあるバラエティのある食事 食物を飲み込む 風味のあるバラエティのある食事
脳は大きく理性がある 脳は小さく順応性のある行動能力は小さい 脳は大きく理性的行動をとる

『まだ、肉を食べているのですか』(ハワード・F・ライマン、グレン・マザー著、船瀬俊介訳、三交社)の238―239ページにもつぎのような記載があります。

 『進化によって、多くの肉食動物がつくられた。たとえば、ライオン、犬、オオカミ、猫。彼らはすべて短い消化器系を持っている。おおよそ、彼らの体長の3倍の長さだ。それは、腐敗しつつある肉をできるだけ早く腸内を移動させるためだ。腐敗した肉は、長く体内にとどまると、毒となって血液を汚染する。・・・・われわれ〔人間〕の消化器官の長さは体長の約12倍にもなる(肉を食べると、5日間の長旅のあと、体外に排せつさせる。菜食なら1―2日だ)。』

体の中で肉が腐敗するなどというのは、腐りかかった肉でも食べるハイエナやハゲタカの話かと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、屠殺直後の肉は、死後硬直でおいしくないため、スーパーで売られている肉は屠殺後かなり時間の経ったもの(牛肉で20日余り、豚肉で3―5日程度)だそうですので、われわれが食べた肉が体内で腐敗しても不思議はないようです。

(2) 牛のような大型の動物は簡単には殺せず、極めてむごたらしいやり方で屠殺されているらしい

わたしがベジタリアンになろうと真剣に考え始めたのは、『ぼくが肉を食べないわけ』の「食肉処理場―屠畜の現場」(143ページ以下)という章の現場報告が頭から離れなくなってしまったことがきっかけでした。この記事は、この本が発行されたイギリスの屠殺場の現実のようですが、非常に残酷であるため、一般の方がお読みになるとショックを受ける可能性があると思います。そのため、別のページにコピーしましたので、勇気のある方だけがお読みいただくようにお願いいたします。--- 同書143―144ページからの引用へのリンク

(3) 地球規模でみると、畜産が砂漠化の主因となっているらしい・・・これについては問題79(環境)をご参照ください

(4) ベジタリアンの方が安上がり

スーパーで肉と魚介類を買わないことを考えていただくと、ベジタリアンがいかに安上がりか分かると思います。暑中見舞いのハガキにベジタリアンになろうとしていると書いたところ、何人かの方がベジタリアンまたは野菜中心の食事にしているというお返事をいただきました。病気になって医者に勧められた方が何人かいらっしゃったのも意外でしたが、安上がりであることを理由に挙げられた方もいらっしゃいました。

それと同時にあまり外食をしなくなりました。レストランで出されるものは、肉か魚介類が含まれているものがほとんどだからです。

さらに、自分で野菜を育てれば、非常に安上がりで、自給自足が可能になると思います。地方自治体によっては市民農園のようなサービスを提供しているところもあると思います。わが家も、次回の抽選に申し込もうと思っています。

(5)野菜だけを食べていても栄養失調になることはない

お坊さんは精進料理だけで生活している(ことになっている)ことからも分かるように、野菜だけを食べていても栄養的にはほとんど問題ないようです。むしろ、病気のもとになる動物性タンパク質を取らないのですから、健康には望ましいと言えます。唯一、ビタミンB12については、植物にはあまり含まれていないようですが、必要量が微量で、ビタミンB12を強化した食品や栄養剤から容易に摂取することができます(注。要するに、(動物性食品と植物性食品の)「バランスのとれた」食事をする必要はないということです。

(注)最近の研究によれば、ビタミンB12 の不足はアルツハイマー病の原因の一つと考えられているようです。さらに、不足状態でなくても、ビタミンB12の血中濃度の低い人は、高い人よりも、アルツハイマー病にかかりやすいとされていますので、ベジタリアンの方は、ビタミンB12 不足には特に注意が必要です。詳しくは、問題84(健康)の答えをご参照ください(2009年4月19日追記)。

米国の食品産業が、政府、議会、学者を金の力で支配して、食品に関する情報を、食品産業に都合のいいようにいかにねじ曲げ、それを一般人に伝え、さらに、それが一般人の常識となっているかについての、非常に詳細な調査に基づいて書かれた、画期的な書物と言える「フード・ポリティクス」(マリオン・ネスル著、新曜社刊、小さな字で書かれた540ページ強の大著です)を今読んでいますが、最後にこの本の冒頭の部分をご紹介します。

『栄養学者である私は、日々、栄養学の理論と実践の大きな矛盾というべきものに立ち向かっている。健康のためには植物性食品、すなわち果物、野菜、穀物を主体とした食生活をすべきであるという栄養学者の助言は50年以上変わっておらず、新たに登場する各種の研究も常にそれを支持している。その一方で、人々は健康を保つために何を食べるべきか、ますます混乱しているように見える。アメリカ人は、人口の半分が太りすぎで、子どもでさえ肥満になり、食生活に関連する病気が死亡と障害の主因となるほどまでに、動物性食品を摂取しすぎ、全体量としても食べすぎている。この矛盾について考えるとき、私はしばしば、これほどまでに食べ過ぎと不適切な食生活を誘う環境、そして食生活と健康の基本原則にこれほど混乱した環境を作り出す上で食品業界が果たしている役割に思いをめぐらせる。』

この本によれば、「バランスのとれた」食事がいいという考えは、どうも食品メーカー、食肉業界などの食品産業が考えた虚構のようです。また、この本はアメリカ社会について書かれていますが、日本もその影響を強く受けているようです。菜食主義についてもっと詳しく知りたい方は、「菜食のススメ」というサイト( http://jazzmens.net/vegetarian/index.html )も参考になりそうです(2006年10月2日)

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