65歳の崖

去年65歳となり「高齢者」の仲間入りをしました。自分では、生物学的年齢が1歳増えただけで、体力、知力は従来通りのペースで低下し続けているという感触だったのですが、周りの対応が予想以上に大きく変わったのには面食らいました。団塊の世代の多数の皆様が、これから私と同じ目に遇われる可能性があると思いますので、今回は私がこの1年にどんな目に遇ったのかを、ご紹介しようと思います。

まず多くの会社同様、私が働いていた会社にも停年制という一種の年齢による差別があり、もっと働きたかったにもかかわらず退職を余儀なくされました。しかし、まだ働く必要があるため、八方手をつくして、フルタイムの仕事を探しましたが見つからず、結局翻訳の請負仕事をすることにしました。

雇用保険の保険料を払っても、65歳を超えるとわずかな一時金が1回支払われるだけです

まず、65歳以上だと雇用保険は、65歳未満の雇用保険金額の1ヵ月分を下回る一時金が1回しか支払われませんでした。日本に長い外国人にこの話をしらた、それは詐欺だと言っていました。そもそも、この一時金の制度のことを知っている人は少なく、勤めていた会社の人事担当者でさえ、65歳を超えると失業保険は出なくなると思い込んでいたため、離職票を出してもらうのに一苦労しました。

また、ハローワークの端末で求職案件を探してみましたが、できそうな仕事について係の方にお尋ねすると、既に100人以上の方が応募しているとのことで、「高齢者」が採用される可能性はほとんどないという感じがしましたのであきらめました。また、係の方にお聞きすると、年齢無制限の求職案件も、年齢制限をして募集すると法律上問題があるため無制限にしているだけで、実際には就職は非常に難しいだろうとのことでした。

シルバー人材センターで仕事を紹介してもらうと賃金の10%がピンハネされます

それではということで、シルバー人材センターにも行きましたが、「高齢者の能力を生かした活力ある地域社会づくり」が目的であるため、金を稼ごうという高齢者は想定していないようです。おまけに、賃金の10%がピンハネされるようです。これでは、貧しい高齢者を安く使って上前をはねるための、天下り組織ではないかという気がしました。

どうも、いろいろな制度が、65歳以上の老人には、働くなと言っている感じです。これは人間の基本的人権の一つである労働権の否定であり、労働基本法で禁止されている、年齢による差別そのものという気がします。厚生労働省のホームページには「雇用対策法が改正され、平成19年10月から、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないこととされ、年齢制限の禁止が義務化されました」と書かれていますが、「高齢者」は労働市場から実質的に締め出されていて、雇用保険さえ受け取れないにもかかわらず、こんなことを平気で書ける神経にはあきれます(2013年2月25日)。

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