早朝のマナローラ

イタリア北部の地中海(この辺ではリグリア海と呼ばれています)沿岸でフランス国境まで直線距離で100km位のところにあるマナローラを2019年5月に訪問した際に早朝に写した写真です。マナローラを含むこの地域の5つの漁村はチンクエ・テッレ(Cinque Terre、5つの村という意味。チンクエは5という意味で、テッレ(terre)の単数型テッラ(terra)は地球という意味もあって、英語のearthに対応します)と呼ばれています。断崖のために陸側から近づきにくいにもかかわらず、500年以上前から階段状のぶどう畑(左側の崖の上や正面の建物の上に写っています)でぶどうが栽培されていることもあってそれぞれの村で独特の景観が形成されています。そのためこれら5つの村(西側からモンテロッソ・アル・マーレ、ヴェルナッツア、コルニリア、マナローラ、リオマッジョーレ)とその東側に隣接するポルト・ヴェネーレは1997年に世界遺産に登録され、99年には国立公園にも指定されました。海沿いを19世紀(1874年)に開通した鉄道が走っていて(下の地図では黒い点線で示されていますが、ほとんどがトンネルです)、近くのラ・スペツィアという街(チンクエ・テッレはラ・スペツィア県にあり、その県都で、人口は約9万4,000人。下の地図では右端に「ラ・スペツィア方向」と書いてある辺りにあります)から船も出ています(下の地図には水色の点線で航路も描かれています)。そのため、現在では多数の観光客が訪れていることから、昼間はかなり賑わっていましたが、上の写真を写した早朝には誰も歩いていないようでした。

マナローラは5つの村のうち東から2番目で、崖に張り付いたようなカラフルな家が非常に美しいため、lonely planetという英国の旅行案内書の「イタリア」の巻の表紙にはローマ、フィレンツェ、ミラノ、ナポリの写真ではなく、なんと(上の写真よりもはるかにカラフルな)マナローラの写真が使われています。さらに同書のチンクエ・テッレの説明(184ページ)の最初には「地球上で最も印象的な海岸風景のいくつかに囲まれていて、巧みに築き上げられたこれら5つの漁村を訪れると、どんなに落ち込んでいても元気づけられます」と書かれています。

上の地図はチンクエ・テッレ国立公園の案内パンフレットからコピーさせていただいたものです。日本語を赤枠で囲んだ部分をクリックすると村内の写真の部分に移動します(戻る場合は、ブラウザーの「戻る」ボタンをご利用ください)。この地図に表示されているように、ハイキングコース(赤い線)がたくさんあって、徒歩で回る人もかなりいるようです。200以上のガイド付きツアープランがあるそうです。わたしとかみさんは、ラ・スペツィアに朝に列車で到着して、駅前にあるホテル・マリー(Hotel Mary)に荷物を預かってもらい、ラ・スペツィア港から各村に停泊しながら西の端のモンテロッソ・アル・マーレまで行く予定でしたが、当日は海が荒れていたため、どこにも寄港することなく西端のモンテロッソ・アル・マーレまで着いてしまいました。

上の写真はラ・スペツィア港の観光船乗り場で右手に見える船の影になっている小さな船に乗りました。

港を出ると山の中に住宅が点在しているのがなかなかきれいでした。


45分くらいでチンクエ・テッレの東側に隣接するポルト・ヴェネーレに着きます。塔のように縦長な建物が密接して建っているのは、かつて住居兼要塞として機能していた時代の名残だそうです。

ポルト・ヴェネーレから半島を回り込んでチンクエ・テッレに向かう途中の景色です。同じくらいの大きさの船が走っていましたが左側の崖の上にお城のような建物が見えます。


しばらくすると5つの村のうちの一番東側にあるリオマッジョーレ(上の写真)が見えてきます。右側の集落が村の中心で港があり、左側の海岸沿いの白い建物のある場所がリオマッジョーレ駅です。

次に東から2番目で一番最初の写真を写したマナローラが見えてきます。右側にマナローラ駅も見えます。

東から3番目のコルニリアは唯一山の上にあります。観光客は右側に小さく見える駅から階段を上ることになります。

東から4番目のヴェルナッツアは右側の岩の上にあるドリア城と城の上に黒く見える塔が目印です。

モンテロッソ・アル・マーレ

西の端のモンテロッソ・アル・マーレの船着き場ですが、着いた時には波は収まっていました。ラ・スペツィアからモンテロッソ・アル・マーレまで列車を利用すると26分位(料金は4ユーロ、現在の1ユーロ128円というレートで換算すると512円)かかりますが、船だと半島を回り込むため2時間くらいかかり、料金は23ユーロ(現在のレートでは2,944円)とかなり割高となります。

モンテロッソ・アル・マーレでは5つの村の中で唯一砂浜が広がっていました。到着した時間はランチタイムを過ぎていたため、開いているレストランを探すのに苦労しましたが、Trattoria Pizzeria La Marinaというレストランはまだランチを提供できるということなので、かみさんと2人で貸し切り状態でしたが、ご主人お勧めの海の幸のリゾット(Risotto ai frutti di mare)を注文することができました。料理は大鍋に入った状態で出てきて、日本ではあり得ない量だったのでびっくりしましたが、ご自慢の料理だけあって大変おいしくいただけました。

その日はモンテロッソ・アル・マーレを一回りして、宿泊予定のホテルがあるマナローラまで列車で向かいました。

マナローラ

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マナローラでは「Ca' de Gianchi」(カ・デ・ジャンキ、下の写真)というホテルに泊まりました。CaはCasaつまり家の短縮形でGianchiは名前か地名のようです。つまり「Gianchiの家」という意味になるようです。ただし、標準的なイタリア語だとこういう場合、deは使わずにdiを使うため、この地方の方言ではないかと、かみさんがイタリア語を教えていただいているMatteo Savareseさんはおっしゃっていたそうです。

これがホテルですが宿泊可能なのは3室(ダブル2室、アパート形式1室)のみです。1階は薬局でホテルの看板は、建物右手に飾ってあるマリア像の下の小さなプレートだけでした。われわれが泊まった3階のバルコニーに立っているのはかみさんです。

booking.comという予約サイトで予約して、当日は駅からgoogle mapでホテルを探しながら歩いていると、この入り口の右側に座っていたとなりのおじさんが、カ・デ・ジャンキならここを入るといいと教えてくれました。どうも宿泊客は皆探すのに苦労するらしく、うろうろしている旅行者はこのホテルを探していることがよくあるため声をかけてくれたのかもしれません。おじさんによれば、この辺りではホテルの名前はカ・デ・チャンキみたいに発音するとのことでした。そこで早速、鉄パイプの扉を開けて裏に回り、裏側の入り口からボンジョルノと大声で叫ぶと、ご主人のセルジオ(Sig. Manuela E Sergio)さんが出ていらっしゃって部屋に案内してくださいました。今回の旅行では一番清潔でおしゃれな部屋だったと思います。ただセルジオさんは、メールでは英語で問題なくやりとりできましたが、イタリア語以外はあまり話されないようなので、片言でなんとか切り抜けるのに苦労しました。ただ、気配りを欠かさない、大変好感の持てる方でした。コーヒー、紅茶、ハーブティーなどが用意されていて、お勧めのレストランもメモしてくれました。また、隣が生活協同組合(coop)の店舗なので食品を買えることも教えてくれました。われわれはけちけち旅行なので、生協で食品(といっても、パンと果物だけでしたが)を買い込んで夕食と翌日の朝食を済ませました。下の写真がその生協でチンクエ・テッレは"5 Terre"と書くこともあることが分かりました。

翌日は朝にマナローラを一回りしたあと、5つの村のうち一番東側にあり、列車で1駅目となるリオマッジョーレを訪問しました。

リオマッジョーレ

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リオマッジョーレは人口が1,542人(wikipediaによる)と5つの村の中で最大で、チンクエ・テッレ国立公園の事務所はこの村にあります。リオマッジョーレとお隣のマナローラの間には「愛の小道(Via dell'Amore)」というチンクエ・テッレでも最も人気のある遊歩道があったのですが、2012年の崖崩れのために、マナローラ駅から200mの区間を除いて現在でも通行止めになっていて、開通時期は未定のようです(lonely planetという旅行案内書の情報です)。ただ国立公園のサイトを見ても工事中の場所にこの区間は含まれていないようなので、開通した可能性もあると思います( http://www.parconazionale5terre.it/pagina.php?id=52 )。

上の写真の左側の崖の裏側に駅があります。

駅のプラットホームは人でごった返していました。

左右の壁に設置されている機械は改札機で、駅で切符を買っても、この機械で通過時間を打刻しなければ、不正乗車とみなされ、見つかれば超過料金を払わされるため、注意する必要があります。チンクエ・テッレとラ・スペツィアの間はどの区間も乗車料金は4ユーロ(現在のレートで512円)でした。チンクエ・テッレ内の電車、バス乗り放題のチンクエ・テッレ・カードは(4歳以上なら)1日券が12ユーロ、2日券が23ユーロ(現在のレートでそれぞれ1,536円と2,944円)ですが、われわれは乗車回数が多くないので、乗る度に4ユーロの券を買いました。

ヴェルナッツア

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ウェルナッツアでは中央に見えるドリア城とその塔が特徴的で、塔にも上れるようですが、訪問したときには、塔に登れることを知らなかったため、登り損ねました。

上の写真はサン・フランチェスコ修道院の下で写したもので、この塔も船から写した写真に写っています。

コルニリア

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コルニリアは船からの写真でも分かるように標高100mの山の上にあり、下に見える線路の先に白く見える駅から歩いて、ラルダリーナ(Lardarina)と名付けられた377段の階段(この写真)を上るか、片道2.5ユーロ(現在のレートで345円)のバスを利用する必要があります。

上の写真はコルニリア駅ですか、昼間は20分位の間隔で列車が通るため、皆さんのんびり待たれているという感じでした。プラットホームの横に書いてあるのは「線路横断禁止」という警告です(左側がイタリア語のVietato attraversare i binari. 右側が英語のDo not cross the railway lines.です)。プラットホームの高さが日本より低く、簡単に線路に降りられるためにこんな警告が書かれているようです。

ラ・スペツィア

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チンクエ・テッレへの入り口とも言えるラ・スペツィアは、イタリア海軍最大の軍港で、造船所や軍需工場もたくさんあるようですが、訪問していたときには気がつきませんでした。なかなか趣のある街という感じがしました。

トランクを1日預かっていただいたMary Hotelはビジネス客が多い感じでした。上の写真は駅前広場から見たホテルですが、駅前広場からエレベーターで1階降りるとこのホテルの入り口の前に出ます。

朝食はバイキング方式ですが、「パンとケーキは自家製ですよ(おそらく、Pane e dolci sono fatti in casa.とおっしゃったと思います)」と奥さまが説明して下さいましたが、充実した朝食でした。

イタリアはどこに行っても人が集まって話をしている感じがしましたが、ラ・スペツィア駅のプラットホームも例外ではありませんでした。イタリアでは小学校から大学まで口頭試験が多く、話すことを非常に重視するという文化的背景があるようです。

地中海沿岸でイタリアとフランスの国境の西側約100kmに位置するフランスのツーロンから、東側約100kmに位置するラ・スペツィア付近までの海岸をフランス語とイタリア語でともにリヴィエラと呼んでいますが、リヴィエラ(rivièra)というのは、イタリア語で海岸という意味の普通名詞のようです。リヴィエラのフランス国内部分は、「コート・ダジュール(Côte d'Azur、紺碧海岸)」、イタリア国内部分は「リグーリア海岸」と呼ばれているようです。リグーリア海岸はラ・スペツィア県を含むリグーリア州の海岸部となっています。

この日は、ここから北イタリアの東の端であるトリエステまで約400kmを一日がかりで列車で移動しました。列車は、途中ピサ中央駅、フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェラ駅、ヴェネチア・メストレ駅(ヴェネチアの陸側にある駅)の3カ所で乗り換える必要がありましたが、この切符は日本からイタリア鉄道会社(トレニタリア/Trenitalia、旧国鉄で現在でも国鉄の略称であるFS(Ferrovie dello Stato)が略称として使われています)のサイトでワン・クリックで購入することができました。しかも、接続も全く問題ありませんでした。唯一問題だったのは、ピサ中央駅のプラットホームにエレベーターもエスカレーターもなかったことで、そのため、トランクを階段で持ち上げたり、降ろしたりするのに一苦労しました。トリエステについては「夕方のアウダーチェ桟橋」をご参照ください。(2021年2月28日)。

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