問題32 (日本語)の答え…広辞苑第5版には、( b. 前戯)という言葉は載っていません。

「前戯」という言葉が゙国語辞典に載っていないという話は、ある出版社の常務取締役の方から、かみさんが教えていただいたものです。それ以来、いろいろな国語辞典を調べてみましたが、広辞苑第5版を含めて、載っている国語辞典はありませんでした。

前戯という言葉を、和英辞典(厳密に言うと、研究社の「リーダース+プラス」のCD-ROM和英完全一致検索)で調べたところ、foreplay, love play, contrectation, firkytoodle, forepleasure, grope, monkey trick, pleasuring, precoital, preliminaryと10個も出てきました。和英辞典に10個も訳語が出てくる言葉が、国語辞典に載っていないのは、おかしいと思います。英英辞典などに比べると、日本の国語辞典は、どれも似たりよったりで、労力を節約するために、お互いにパクリ合っており、一つの辞書が載せ忘れると、すべての辞書が一斉に見逃すのではないかと勘ぐりたくもなります。

岩波書店をはじめとする出版社は「前戯」を過小評価しているのではないか(確かに、欧米人に比べて、日本人の性習慣では前戯が軽視されていることは、謝国権氏も、例の名著で触れられていたような気がします)と思って、岩波書店に電話で、なぜ載っていないのかを聞いてみました。

担当者のお話では、「漢字を組み合わせた単語の場合には、個々の漢字の意味を組み合わせれば、単語の意味が分かるとみられるときには載せないこともある。言葉を貴賤(きせん、貴いことと賤しいこと)によって区別することはない」とのことでした。「前」と「戯」という漢字だけで、誰でもセックスを連想するとお考えのようですが、それならば、遊戯、球戯などという言葉からも、当然セックスが連想されるとお考えになっているかどうかを、お聞きしたいものです。

残りの(a. ぶりっこ、c. さらなる)はともに、第5版から新たに採用された言葉です。ぶりっこなどという流行語を採用する必要があったのか疑問を感じます。「さらなる」については、最近ではますます使う人が増えた言葉ですが、わたしは最も使いたくない言葉の一つだと思っています。さらなるについては、問題13(日本語)に、有名な翻訳家の飛田先生のご意見ととともに、詳しく説明してありますのでご参照下さい。(99年3月24日)。

(2011年1月21日追記)野口悠紀雄氏はその著書『「超」文章法』(中公新書、中央公論新社刊)で「さらなる」は誤用であると断言しています。詳しくは問題66(日本語)答えをご参照ください。

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