問題71(英語)の答え・・・(d. ある前提条件が満たされた場合だけにあることが実現する、e. あることが将来起こると見込まれる)場合には、willは使えません。

残りの選択肢は、いずれも will が使える例です。 問題70(英語)の答えでご紹介し、このページの下にもコピーした Collins Cobuild Dictionary の意味の〔番号〕にそれぞれの選択肢を対応させると、 (a. 話し手の強い意志を表わしている)〔1または3〕、(b. 対象となる行為が間近に迫っている)〔3〕、(c. 正式に決定した将来の事項や決定内容に言及する)〔2〕、(f. 事物本来の傾向・習性を表わす)〔9または10〕, (g. 習慣・規則的動作を表わす)〔10〕と考えられます。

以下では、『和英翻訳ハンドブック』の第7章 『Will と plan』に紹介されている will が使えない二つの例をご紹介します。

(1)ある前提条件が満たされた場合だけにあることが実現する場合

〔日本語の原文〕米テキサス・インスツルメンツは日本での半導体研究開発拠点である筑波研究開発センターの陣容を
拡充する

〔日本人翻訳者の訳〕 Texas Instruments inc.
will boost the number of researchers at its semiconductor research and development facility at Tsukuba.
(boost は「押し上げる」、「拡充する」、semiconductorは「半導体」という意味です)

〔米国人エディターの直し〕 "
will" を "plans to" に直した。

日本人の翻訳者が、「拡充する」という未来形(前問で説明した、動作動詞のル形)で表わされた事柄には、未来形の will が使えると考えたのに対して、米国人のエディターが will を plan to に直したのは、この文章の内容から判断して、問題となっている事柄が、無条件に実現するとは限らず、例えば、「優秀な研究者が採用でき」、「会社をとりまく状況が急激に悪化することがない」などという前提条件が成立した場合だけに実現されると考えたためだそうです。同書によれば、will は「強い意志」を表わすことばでもあり、上の例のような場合に will を使うと、「必ず」、「絶対」に拡充するというニュアンスになってしまうそうです(Collins Cobuild の意味としては3.の「将来起こることまたは、将来に予想される事態について約束したり、警告したりする」場合に該当するようです)。

このような場合に、will の代わりに使える言葉としては、"plan to" 以外に、"intend to", "is expected to", "is hoping to", "is scheduled to" などがあり、いくつかの例が同書には挙げられています。

(2)あることが将来起こると見込まれる場合

〔日本語の原文〕(AB社は)用紙の売り上げを9%増の5,200億円と見込んでいる。

〔日本人翻訳者の訳〕 (AB expects that) paper sales will expand 9% to \520 billion. (billion は10億)

〔米国人エディターの直し〕 Paper sales are expected (by AB) to expand 9% to \520 billion. ---つまり、"will"を"be expected to"に直した。

この直しも、will expand とすると、見込みではなく、「必ず」、「絶対」にそうなると言うのに等しくなるためです。

ただ、(A)対象となる行為が間近に迫っている場合(「決算を今日の午後に発表する」、Collinsの〔1〕に対応)や、(B)正式に決定した事項や決定内容(「遊休資産を売却する」、Collins の〔2〕に対応)に言及する場合には、"is expected to" や "is likely to" のような不確かな言い方はかえってよくなく、will や決定内容の場合には、"has decided to" などを使うべきだそうです(同書232ページ)。

これで答えはおしまいです。以下は余談となりますが、証券会社にお勤めの方によれば、will の使用に一番神経質なのが、アメリカの証券会社だそうです。例えば、「市場の株価は今年の安値を付けたが、これから新高値まで上昇するだろう」、「A社は、2004年度も6年連続で20%を上回る増益を達成するだろう」などという文は、日本語では、根拠が明記されていれば問題とはならない可能性もあるそうですが、これをそのまま will を使って英訳すると、アメリカでは、たとえ根拠が明記されていても、(不確かなことについて、「必ず」、「絶対」というニュアンスを持つ will を含む)「断定的表現(promissory expression)」が使われているため、不適切な表現とみなされるそうです。

アメリカほど厳しくはありませんが、日本でも、証券会社の社員が顧客に対して、「この株は絶対もうかる」などと言って勧誘すると処分されることになっているそうです。さらに、一般の人が同じことを言っても、根拠のないうわさを流すこと(風説の流布)を禁じた証券取引法の条項に抵触するようです。ところが、『日経金融新聞』(2003年2月18日付)の「複眼独眼」というコラムによると、証券会社を監督する立場にある金融庁の、「竹中平蔵金融担当相は(2003年2月)7日の閣僚懇談会で各閣僚に上場投資信託(ETF、引用者注:主に株式で運用しているため、下落することもある)の購入を呼びかけ、その直後の記者会見で「絶対にもうかる」などと発言した。14日の衆院予算委員会で、発言は「不適切だった」と陳謝したが、撤回はしなかった」そうです。

法令を守らせることが主要業務の一つである官庁の大臣が、法令に違反した発言を公然と行い、法令違反であると指摘されても撤回しないというのですから、あきれます。竹中氏は元エコノミストだったようですが、株式市場についてのこの程度の基本的知識も持ち合わせていないというのでは、本業の方でも、けっこういい加減なことをやってきた感じがします。エコノミストと呼ばれる連中の中には、竹中氏や「手鏡おじさん」以外にも、結構めちゃくちゃな人がいるようですので、近いうちにどこかでまとめて取り上げようと思っています(2004年8月31日)。

(2006年11月26日追記)・・・問題エコノミストの話を問題80(経済学)に取り上げました。

Collins Cobuild Dictionary のWill の項 和訳("you use will"の部分は省略しました)
1. You use will to indicate that you hope, think, or have evidence that something is going to happen or be the case in the future. 将来、あることが起こることまたは、ある状態になることを希望する、または、そうなると考える、またはそうなるという証拠を持っていることを示す場合
2. You use will in order to make statements about official arrangements in the future. 将来についての正式な取り決めについて述べるために
3. You use will in order to make promises and threats about what is going to happen or be the case in the future. 将来起こることまたは、将来に予想される事態について、約束したり、警告したりするため
4. You use will to indicate someone's intention to do something. だれかが何かをしようとしているということを示すため
5. You use will in questions in order to make polite invitations or offers. 疑問文で、丁重な招待または提案をするため
6. You use will in questions in order to ask or tell someone to do something. 疑問文で、誰かにあることをするように頼んだり、命令するため
7. You can use will in statements to give an order to someone. (FORMAL) 平叙文で、誰かに命令するため(改まった言い方)
8. You use will to say that someone is willing to do something. You use will not or won't to indicate that someone refuses to do something. 誰かが何かをしたいということを言いたい場合。Will not (won't) を使うのは、誰かがあることをするのを拒否していることを示すため。
9. You use will to say that a person or thing is able to do something in the future. 人または物が、将来あることをできると言おうとするとき。
10. You use will to indicate that an action usually happens in the particular way mentioned. 言及された特定の仕方である行為が、通常行われる場合。
11. You use will in the main clause of some `if' and `unless' sentences to indicate something that you consider to be fairly likely to happen. ある If または Unless 文が、従属節となっている場合の主節で、話者が考えているあることが実現する可能性がかなり高いことを示すため。
12. You use will to say that someone insists on behaving or doing something in a particular way and you cannot change them. You emphasize will when you use it in this way. 誰かが、特定のやり方で振る舞ったり、行動したりすることを強く主張しているものの、その人の考えをあなたが変えることができないことを言う場合。この用法を使うときは、will を強調する。
13. You use will have with a past participle when you are saying that you are fairly certain that something will be true by a particular time in the future. will have は、将来のある時点までに、あることが実現することがかなり確実だとあなたが言うときに、動詞の過去分詞とともに使われる。
14. You use will have with a past participle to indicate that you are fairly sure that something is the case. will have は、あることがかなり確実に起こるということを示すために、動詞の過去分詞とともに使われる。

(2004年8月31日)

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