問題78(健康)の答え・・・ (j. アルツハイマー病)以外はすべて、肉を食べないことによって、かかるリスクを下げられる病気です。さらに、問題77(健康)でご紹介した『危険食品読本』(椎名玲〔しいなれい〕、吉中 由紀〔よしなか ゆき〕著、文春文庫PLUS)によれば、米国では、アルツハイマー病のために亡くなったとされている人の中にも、狂牛病にかかった牛の肉を食べたことが原因とみられる、クロイツフェルト・ヤコブ病のために亡くなった人が多数含まれている可能性が否定できないそうです(同書49ページ)。

a. 心臓病 ・・・・『ぼくが肉を食べないわけ』(ピータ・コックス著、築地書館)によれば、厳格なベジタリアンの冠状動脈血栓心臓病による死亡率は、一般人の12%にすぎないという報告があるそうです。アメリカの「疫学」(病気の原因を統計的に明らかにする学問)の権威であるローランド・L・フィリップス博士は、1978年に発表した論文で、ベジタリアンの生活スタイルを唱えている「セブンス・デイ・アドベンティスト」というキリスト教プロテスタント系の一宗派の信者2万5,000人と一般人の上記心臓病による死亡率を比較しました。調査対象となった信者はすべてカリフォルニア州に住んでいましたが、カリフォルニア州に住み、肉を普通に食べている一般人と比較して、肉食を続けている(ずぼらな)信者を含めた信者全体の上記心臓病による死亡率は平均で37%、肉を全く口にしない(信心深い)ベジタリアンの信者については12%にすぎませんでした(同書7ページ)。

さらに、1990年には、一般的な治療や薬に頼らなくても、ベジタリアンの食事だけで、冠状動脈血栓心臓病(動脈硬化症)の治療効果を持ちうるというディーン・オーニッシュ博士(Dr. Dean Ornish)の報告が、ザ・ランセット誌(世界で最も権威のある医学雑誌の一つ)に掲載されたそうです。この実験では対象患者を、ベジタリアンの食事の効果を調べる実験グループと、比較のための、一般的な治療を受けるコントロールグループのどちらかに無作為で振り分け、1年後に病気の状態が比較されました。実験グループの患者は、野菜・果物・穀物・豆・大豆製品からなる低脂肪の食事を無制限にとることができましたが、動物性食品は卵白と最大1日1カップの低脂肪の牛乳かヨーグルトしか許されず、禁煙して、適度な運動をすることが求められたそうです(Wikipediaの博士の項によれば、これに瞑想(めいそう:meditation)も加わったようです)。

「1年後には、コントロールグループの3分の2は病状が悪化したのに対して、実験グループの22人中18人は血管内の妨害物のサイズが小さくなり、結果として血液の流れが増加した。ひどい妨害物のある人ほど大幅に改善した」そうです(『ぼくが肉を食べないわけ』の194〜195ページ)。

b. ガン ・・・1981年に発表された人間のガン発生に関する疫学的研究によれば、ガンの危険因子のうち最大のものが食事(35%)で、以下タバコ(30%)、感染(10%)、性行為(7%)、職業(4%)、アルコール(3%)、物理的原因(3%)、汚染(2%)、以下、食品添加物、工業製品、医薬品(それぞれ1%)となっているそうです(『ぼくが肉を食べないわけ』の168-169ページに引用されている、リチャード・ドルとリチャード・ピートが1981年に発表した疫学研究結果)。さらに、同書170ページからコピーさせていただいた、下の図から分かるように、腸ガンの死亡率と、食肉タンパク摂取量の間には明確な相関関係があるようです。つまり、食肉タンパクの摂取を減らせば、腸ガンの死亡率を減らせるとみられます。


この見方に対して、各国の国民の遺伝的な特性が関係しているという反論もありました。ところが、日本人についてのデータから、遺伝的特性よりも、食習慣の影響が大きいということが明らかとなりました。同じく170ページからコピーさせていただいた下の図では、生まれも育ちも日本という日本人の死亡率〔1.9%〕に対して、アメリカに住む日本人の死亡率は(アメリカ以外で生まれた〔6.1%〕か、アメリカで生まれたか〔6.2%〕にかかわらず)、普通の日本人の3倍以上と、むしろ白人の平均〔7.9%〕に近いことが分かります。食事以外に大きな影響を与えるとみられる要因が見当たらないため、食生活、食習慣の違いの影響が大きいことが明らかとなりました。

さらに、同書の171―173ページによれば、心臓病の項で触れた、「セブンス・デイ・アドベンティスト」の信者は、(肉を全く口にしない人が全体の半分を占めるにととどまっているにもかかわらず)、すべてのガンによる死亡率の合計が一般のアメリカ人の52%と約半分すぎないそうです。信者の死亡率が一般人よりも特に低い種類のガンには、肺ガン(一般人の10%)、膀胱(ぼうこう)ガン(同28%)、食道ガン(同34%)があります。そのほか、胃ガン(同62%)、白血病(血液のガン、同70%)、生殖器ガン(同71%)、リンパ腫(同87%)でも、かなりの差が認められるようです。

『ぼくが肉を食べないわけ』に紹介されている、いくつかの大規模研究はいずれも、肉食によってガンにかかるリスクが高まることを示しており、「(1990年の8万8,000人を越える女性を対象にした研究)が理屈抜きに明らかに示したことは、肉自体が(発ガンの)主要な危険因子である、ということであった」そうです(178ページ)。

また、180ページに紹介されていた1983年のギリシャの研究によれば、現在は肉食をしていても、食事の内容を変えるとリスクを減らせるようです。例えば、キャベツ(またはレタス)、ホウレンソウ、ダイコンを食べる量を2倍にすると、食べる量を増やさなかった場合にくらべて、直腸ガンにかかる危険度を、それぞれ0.78、0.44、0.54に低下させることができるのに対して、牛肉や羊肉を食べる量を2倍にすると、危険度は同じくそれぞれ1.77倍、2.61倍に上昇するそうです。つまり、いままで肉食を続けていても、これからやめれば、リスクを減らす効果が期待できるようです。

同書181ページには、肉に含まれる発ガン物質について驚くべき研究結果が紹介されていました。(1)炭火焼きのステーキ1キログラムには600本のタバコに含まれているのと同量のベンゾピレン(強力な発ガン物質)が含まれている。(2)加熱しすぎの肉には、染色体に損傷を与え、ガンに関係すると考えられる化学物質が少なくとも8種類含まれる。(3)肉製品に含まれる亜硝酸塩は、人体内でほかの化学物質と化合し、ニトロソアミン(非常に強力な発ガン物質)を形成するそうです。

また、ベジタリアンと肉食の人の体質的な違いも、死亡率の差に関係している可能性があるようです(181―182ページ)。(1)ベジタリアンは肉食の人と異なった組成の胆汁酸を持つことが知られていて、これがガン細胞の発達抑制に深く影響している。(2)ベジタリアンの免疫システムは肉食の人よりも強く、ガン細胞を芽のうちにつみ取る、殺し屋細胞の数はベジタリアンと肉食の人では差はないが、ベジタリアンのこの細胞の強さは、肉食の人の2倍であることが分かった。(3)肉、魚、酪農製品(に加えて、品質よりも採算を重視して、農薬を大量に使って育成させた果物)は、有毒な有機塩素(PCB、DDT、ダイオキシンなど)の主要な源であるため、肉製品を全くやめたり、農薬無散布の果物〔引用者追記:や野菜〕のみを購入しようとすることは道理に合う。(4)ベジタリアンは大量のビタミンAをベータカロチンの形で植物食品からとる。ベータカロチンは、肺ガン、膀胱(ぼうこう)ガン、咽頭(いんとう)ガン、直腸ガンから人を守ると考えられるとのことです。

〔2015年12月30日追記〕GreenMedinfoというホームページに掲載されていた「がん幹細胞を殺す25品目の食品成分は抗がん剤や放射線治療よりも優れた効果を発揮する場合がある」という記事によれば、抗がん剤や放射線治療よりも優れた効果を発揮する食品もあるようですので、記事を翻訳して「がんの再発や転移を抑える効果が期待できる25種類の食品成分」という記事を掲載しましたので御参照ください。

c. 高血圧

ベジタリアンの血圧の平均は、肉食をする人よりも低いという研究は多数あるようです。その一つが1977年のオーストラリアの研究で、『ぼくが肉を食べないわけ』の163ページからコピーさせていただいた下の図から、すべての年齢層で、拡張期血圧(=最低血圧)に差があることが分かります。



下の図は、同じページからコピーさせていただいた、1980年の同様なイギリスでの研究結果ですが、ここでも肉を食べる人と食べない人の間に、心臓収縮期血圧(=最高血圧)と拡張期血圧(=最低血圧)でともに大きな差があることが分かります。



さらに心臓病の場合同様に、ベジタリアンの食事には高血圧の治療効果もあるというスウェーデンの研究もあるそうです。この研究では、平均8年間の高血圧の病歴を持ち、薬物治療を受けている26人の患者が対象とされました。これら患者は、有機栽培の果物や野菜の食事を摂.る一方で、肉食だけでなく、コーヒー、紅茶、砂糖、塩、チョコレート、塩素殺菌した水も避けるという厳しい食事制限を1年間行いました。その結果、平均で収縮血圧が7―9mmHg、拡張血圧が5―10mmHg低下し、完全に治ったという人が30%、とても良くなったという人が50%、少し良くなったと感じた人が15%と、大半の人に治療効果が認められました。また、「26人中20人は投薬が全く不要になり、残り6人は多少投薬を受けていたが、量は半分になった」そうです。さらに、血中コレステロールも平均15%低下するというおまけも付いたそうです。

d. 糖尿病

ミネソタ大学公衆衛生教室による、2万5,698人のアメリカ人を対象にした、1960年から21年間にわたる研究によれば、ベジタリアンの生活スタイルを唱えている「セブンス・デイ・アドベンティスト」の信者の糖尿病による死亡率は、一般人よりも45%も低く、また、全く肉を食べない人が糖尿病にかかった場合の死亡率も、少しでも肉を食べる人の1.8分の1、週に6日以上食べる人の3.8分の1にすぎないという結果が得られたそうです(『ぼくが肉を食べないわけ』の184―185ページ)。

また、イギリス糖尿病協会(British Diabetic Association)は、『複数の糖尿病患者向けに推奨される食事法が、複合糖質(引用者注:でんぷんのこと、ブドウ糖、果糖などは単糖類と呼ばれ、糖類で一番単純な構造をしているのに対して、複数の単糖類が結合したものが複合糖質で、多糖類とも呼ばれるそうです)と食物繊維を多く摂取し、脂肪(特に〔引用者注:肉類、乳製品に多く含まれる〕飽和脂肪)の摂取を少なくすることをすすめている。ベジタリアン食事法は、非ベジタリアン食事法よりもこれらの推奨される食事に適合する傾向がある』と指摘して、糖尿病患者に対して、ベジタリアンの食事法を推奨しているそうです。(「世界ベジタリアン連合」という団体のホームペーの「よくある質問と答え」http://fruit.easy-magic.com/user/index.php?menu_id=36&mode=view_content&news_content_id=196&page=1 )。

インスリン療法が必要な糖尿病患者を二つのグルーブに分け、一方は平均的な西洋食(1日食物繊維20グラム)で、もう一方は繊維の多いベジタリアンの食事(同65グラム)による食事療法を行ったところ、後者に必要なインスリンの量は、前者の73%減になったという報告があるそうです(『ぼくが肉を食べないわけ』の187ページ)。

さらに、牛乳と糖尿病との間には興味深い関係があるようです。子どもの糖尿病患者の数は、親たちの世代に比べて約6倍に増加しているそうですが、『ぼくが肉を食べないわけ』の185―186ページには、次のような指摘があります。

母乳で育てられた子どもと比較すると、牛乳で育った子どもは人生の後期に糖尿病にかかりやすい。最近国際的な牛乳消費パターンを調べた結果、インスリン依存型糖尿病と強い関係があることが分かった。・・子どもを生後9カ月前後畜産製品から遠ざけることで、糖尿病から守ることができる。・・・・この研究は、人体が誤って自身のインスリン生成細胞を攻撃するという自動免疫反応を牛乳タンパクが引き起こしていることを示唆している。

e. リューマチ

リューマチは、もともとは、痛風、骨粗鬆症などの120種類以上の病気の総称でしたが、現在では、慢性関節リューマチのことを意味する場合が多くなっているそうです。以下では、リューマチと言えば、慢性関節リューマチ〔その症状が、リューマチ性関節炎〕のことを指すとご理解ください。

英国のマンチェスター大学が "Arthrists and Rheumatism"(関節炎とリューマチ)という雑誌に発表した、45歳から75歳までの2万5,000人を対象にした研究によれば、肉を毎日食べる人は、あまり肉を食べない人(おそらく週に2回程度)にくらべて、リューマチになるリスクは2倍だったそうです(BBC News, Red meat link to arthrits risk, 2004/12/3, http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/4065433.stm )。この記事によれば、赤みの肉をあまり食べない地中海諸国でのリューマチにかかる率は低く、また、ベジタリアンやヴィーガン(vegan、「ヴェジャン」と発音されることもあるようです、魚介類、卵,チーズ,牛乳なども採らない完全菜食主義者)のダイエットによっても、リューマチのリスクを低減させることが示されたそうです。

研究を行った、Alan Silman教授は、喫煙やビタミンC不足が関係している可能性もあるが、最大の要因は肉の食べる量であると語っているそうです。

また、英国の関節炎患者を支援するためのNPO、Arthritis Care (関節炎治療)のスポークスマンであるMo Atchia氏は、つぎのように語っているそうです。「関節炎患者の生活にとって、ダイエットはますます重要な要因となってきました。そして、このような研究は、食生活が健康状態に与える影響についてのわれわれの理解を助けるものです。関節炎患者にとって、果物と野菜が豊富で、低脂肪かつ高繊維質な食事をとることは、良好な健康状態を維持するための極めて重要な要因です」

f. 関節炎

上でも触れたザ・ランセット誌(世界で最も権威のある医学雑誌の一つ)に1991年に紹介された報告によれば、27人の関節炎患者が、最初の7―10日間、グルテン(小麦に含まれる植物タンパク質)も含まないベジタリアンの食事を、次の3―6カ月間は「ラクトベジタリアン(乳製品は食べてもよい)」の食事をとった結果、4週間後に、関節の柔らかさ、関節のはれ、痛み、朝の関節のこわばり、握力、白血球数その他の多くの健康の目安にはっきりと改善がみられ、その影響が1年後にも残ったそうです(『ぼくが肉を食べないわけ』の160ページ)。

『ぼくが肉を食べないわけ』によれば、ベジタリアンの食事が関節炎の治療効果を持つという話は、かなり昔から知られていたものの、この効果についての医学的な研究はほとんどなかったそうです。ただ、上記の例のように、「多くの患者が自分自身で見つけ出したことが、研究によって確かめられ始めた」そうです。症状の改善は、通常完全なベジタリアンの食事を採用したあとだそうです。「肉や酪農製品にはアラキドン酸が含まれ、それが体内でプロスタグランジンとロイコトリエリンに変わって炎症を促すことからそれは、納得できることだ」そうですが、この辺はわたしはよく分かりません。

g. 便秘

便秘を直すためには、繊維質が豊富な野菜を食べると効果があるということは、ほとんどの読者の方がご存じだと思います。実際、同じくザ・ランセット誌に報告された、デニス・バーキット博士の研究によれば、植物繊維が多く含まれている未精製食が中心の、アフリカのウガンダのいなかに住む「村の子ども」の場合には、食べてから平均33.5時間で排出されるのに対して、精製食が中心のイギリスの「海軍基地に住む人」の場合、その2.5倍の83.4時間もかかっているそうです。イギリスに住んでいても、肉を含まない食事をとる傾向にある「インド人看護婦」の場合には、平均44時間と、未精製食を食べているアフリカの「村の人々」を2割強上回るに過ぎません。

バーキット博士は、大便は量が多いほど排出までの時間が短いことも発見したそうです。例えば、海軍の水兵たちの便の平均重量がたった104グラムなのに対して、ウガンダの村の人々の平均は470グラムと、その4.5倍でした。以下、南アフリカの子どもの275グラム(食べる量が子どもなので少ないことも関係しているようです)、インド人の看護婦、155グラム、イギリスの「非肉食者(ベジタリアン)」は225グラムなどとなっていますが、おおむね、便の量と排出までの時間が逆相関していることが分かります。

『ぼくが肉を食べないわけ』の190ページによれば、多くの科学者が、近代的な病気の増加と繊維摂取の急減とが決定的に関係していると認めているそうです。食事の総カロリーに占める肉、脂肪、砂糖のカロリーの合計の割合は、100年前には15%でしたが、現在では60%に達しているそうです。一方、100年前に比べて、繊維の摂取量が大幅に減少し、特に穀類からの繊維では90%も減少したそうです。100年前には、まれな病気だった、盲腸炎、大腸ガンなどが、その後急増したのは、食事の変化が大きな要因となっているようです。

また、バーキット博士によれば、繊維には難溶性繊維ふすま/ぬか(コーン、オーツ麦、米、小麦などの外皮)、全粒穀物(コーン、大麦、米、小麦、オーツ麦)、シリアル類、果物や野菜の食べられる皮、セロリ、玄米などに含まれる〕水溶性繊維〔いんげん、コーン、オーツ麦、大麦、グリーンピース、芽キャベツ、レンズ豆、にんじん、キャベツ、オクラ、アプリコット、プルーン、なつめ、ブラックベリー、クランベリー、種実類、りんご、バナナ、かんきつ類、オオバコ種子、ある種のガム成分、海藻などに含まれる〕の2種類あり、難溶性繊維は便秘に効果的であるのに対して、水溶性繊維は、便秘に効果があるだけでなく、腸の中身を一種のゲル(ゼリー)状にして、エネルギーの吸収速度を抑える働きがあるため、糖尿病に素晴らしい効果を持っているそうです(『ぼくが肉を食べないわけ』190―191ページ)。

h. 胆石

胆石は、胆のうで分泌される胆汁のなかにコレステロールが多すぎる場合に、これが固まることによって出来る固まりで、胆汁の通路を胆石がふさいだ場合には、腹部に激痛を感じることになります。

イギリスのオックスフォードでの、食事と胆石発生との関係についての研究によれば、肉食をする人に比べて、肉を食べずに自然の繊維を多くとる人の胆石の発生率は2.5分の1だったそうです。「科学者達の結論は、肉食をせずに、低脂肪、高繊維の食事をとると、胆石はできにくいということであった」そうです。

i. 骨粗しょう症

骨粗しょう症はカルシウム不足が原因であるため、カルシウムを豊富に含む牛乳をたくさん飲むべきであるという説は、イギリス医学誌の最近の報告では、「痴呆症の治療と称して脳をすりつぶして与えるのと似た論理である」と否定されているようです。

カルシウムをたくさんとっても、(牛乳にも豊富に含まれる)タンパク質を多くとれば、カルシウムは尿から排出されるため、骨粗しょう症の改善にはつながらないそうです。この排出効果は、植物性タンパク質よりも 動物性タンパク質の方が大きいそうです。『ぼくが肉を食べないわけ』の201―204ページに、カルシウムの摂取量と骨粗しょう症の発症率は直接には結び付いていないことを示す例が多数紹介されていますので、いくつかご紹介しましょう。

「大部分の中国人は酪農製品をとっておらず、その代わりにカルシウムはすべて野菜からとる。中国人は西洋人の半分しかカルシウムをとっていないのに、骨粗しょう症は中国ではまれである」

「エスキモーは世界でも食事からとるカルシウムの量が多いことで有名である(主に魚の骨から1日2000ミリグラム以上)が、骨粗しょう症の率も高いので有名である」

「アフリカのパンツー人の女性はカルシウムを1日たった350ミリグラムしかとっていない。彼女らは生涯9人の子どもを産み、子どもたちに母乳を2年間与える。それでも彼女らは決してカルシウム不足にはならず、骨折も滅多にせず、歯をなくすのはきわめてまれである。こどもたちも強く成長する。(アメリカ政府による)おすすめのカルシウム量が1,200ミリグラムだというのに、どうして350ミリグラムでいいのだろう?答えは簡単だ。それはカルシウムを体外に追い出さない低タンパク食だからだ・・・」

最後に、同書に載っていた、ベジタリアン流の骨粗しょう症を防ぐ、食品と運動(1―6)をご紹介します(205―206ページ)。

(1)肉食をやめ、酪農製品を食べすぎないこと。骨の成長に重要なカルシウム源は、酪農製品に頼らなくても多数ある。例えば葉菜(ケール、スイスフダンソウ、ブロッコリー、ホウレンソウ、海草)、糖みつ、ミネラルウォーター、豆と豆製品、カルシウムで固めた豆腐、ゴマとそのペースト(タヒニ)、カボチャやヒマワリの種子、イナゴマメ、乾燥イチジク、干しブドウ、干しアンズ、アーモンド、ナッツ、かゆ(オートミルなどの)

(2)運動を十分にすること。特に重要なのは体重をかけるもので、たとえば歩く、ダンスなどである。水泳は体重をかけないので、体重をかける運動よりも効果は低いとみられる。

(3)喫煙、カフェイン飲料、過度のアルコールを避ける。

(4)日光を規則的に浴びること。カルシウムの吸収に必須のビタミンDを生成させるため。

(5)常用薬でカルシウム損失を招くことがある。アルミニウム含有の制酸剤などを長期間使用すると、カルシウムと硫黄の新陳代謝が阻害され骨の異常が生じる可能性がある。

(6)カルシウムを補給したければ、炭酸カルシウムが良い。含有率が40%と高く、価格も安い。

(2006年7月17日)


[2015年10月9日追記]この問題を作ってから9年以上経ちましたが、私は基本的にベジタリアンより厳しいビーガン(vegan、乳製品、魚介類も避ける)の食事制限を続けてきた結果、体重はこの間に8kg位減り、血圧もかなり下がってきて、脂肪肝の傾向はありますがそれ以外の成人病にはかかっていません。ビーガンになることにした理由については上記の答えのほかに、「最近気付いたこと」の「わたしがベジタリアンになることにした五つの理由」もご参照ください。また、乳製品を避けるようになったのは、牛乳と乳製品が乳がんと前立腺がんの根本原因であるという報告があったためです。この点については、問題93(健康)と「最近気付いたこと」の「問題93(健康)で触れた「乳がん死亡率」について、山梨医科大学名誉教授・佐藤章夫様がメールでご説明下さいました」をご参照ください。それにしてもこれほど明白なベジタリアンのメリットが報告されていながら、日本にはほとんどベジタリアンはいないというのは不思議です。そんなわけで、日本に長い外国人から"You are the first Japanese vegetarian I've ever seen."と言われたことがこれまで3回ありました。毎回"You are the first/second/third person who told me so."などというと結構受けました。

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