テニスがうまくなりたい方に(パートVI)・・・フェデラーのフォアハンドとフトンたたき

今年(2009年)はフェデラーにとって記念すべき年になったようです。7月に全英(ウィンブルドン)で優勝したため、テニスの4大大会(グランドスラムとも言われます。全豪、全仏、全英、全米オープンのこと)の優勝回数が15回と、サンプラスの14回を抜いて史上最多となり、4大大会のうち唯一優勝経験のなかった全仏オープンに今年初めて優勝するなど、記録づくめでした。特に圧巻だったのが、アンディー・ロディックと対戦した全英決勝戦でした。この試合は、ゲーム数が77と、全英ではこれまでの記録であった、08年の全英決勝戦、ナダール対フェデラー戦の62を大きく上回る過去最高となり、また、この試合では、男子シングルス決勝での1セットの最多ゲーム数30(16-14でフェデラーが優勝を決めた最終セット)も記録しました。

私生活でも、 今年4月11日には、2000年のシドニー・オリンピックで知り合いになって以来交際してきたミルカさんと結婚し、7月23日にはミルカ夫人が、双子の女児を出産しました。

フェデラーのフォアハンド・ストロークでアマチュアが参考にできる点

今回はフェデラーのフォアハンド・ストロークを参考にすると、一般プレイヤーも従来より威力のあるボールを打てるようになる可能性があるという話をします。プロテニスプレイヤーのフォアハンド・ストロークは通常、ボールを打つときに下からこすりあげるようにする、トップスピン・ストロークが大半です。私の記憶によれば、トップスピンを初めて本格的に使い始めたのは、ビヨン・ボルグだったと思います。ボルグの時代のトップスピンは、ボールをこすりあげることに重点が置かれていたらしいことから、ラケットを低い位置から頭より上まで振り上げるのが普通でした。

下の写真は、ビョルン・ボルグが1983年1月に、26歳の若さで突然の現役引退を表明した3年後の1986年に発行された、"STEP by STEP Tennis Skills"というテニスの教則本のトップスピンのページ(42―43ページ)です。現在では、こんな打ち方は、トップスピン・ロブの場合しかしないのではないかと思います。というのも、ラケットを上向きに振ると、スピンはかかりますが、スピードはあまり出ないためではないかと思います。

下の写真は『テニス・クラシック』という雑誌の2007年11月号の『「肩甲骨(けんこうこつ)」スイングで超攻撃的テニスができる!』という記事(解説は、「パートV」にもご登場いただいた、荏原湘南スポーツセンタークリニック(スクール)部門責任者の阿部宏和氏です)に載っていた、フェデラーの(トップスピン)フォアハンドの連続写真(22ページ)です。

この二つのストロークの違いは、(1)前者では上体が、スイングの間中、ボールが飛んでいく方向を向いている(オープン・スタンスと言うようです)のに対して、後者では上体は、最初は完全に横向きになり(クローズド・スタンス)、最後には右肩が前に出るまで回転されている点と、(2)ラケットも、前者では右ひざの高さから、頭の上まで振り上げられているのに対して、後者では、高い位置からスイングが開始され、あまり下がらずに、水平に近くスイングされ、最後は、体の左側にラケットが巻き込まれています。

フェデラーのようなストロークができるようになる方法を、いつも通っているテニススクールで教えていただきましたので、皆様にもご紹介します。

(1)手首をリラックスさせる(フトンたたきスイング)・・・・・テニススクールのコーチによれば、最大のポイントは手首に力を入れないことだそうです。スピードボールを打ちたいと思うと、どうしてもラケットを握りしめてスイングする人が多いようですが、手首をリラックスさせて打った方が、速いボールが打てるようです。長年ラケットを握りしめるくせが凝り固まっていた私の場合も、これがなかなか理解できなかったのですが、コーチが、ラケットを親指と人差し指の2本だけで支えて、手のひらを上向きにして、ラケットをだらっと下げた状態からスイングするという練習をさせて下さり、やっと、手首をリラックスさせてスイングする感触がつかめた気がしました。指2本で支えたラケットを、ひじをかなり曲げて(これについては、パートIVをご参照ください)、上体からあまり離さずに、体の真横辺りの打点(パートIVに示した図では、打点はかなり前になっていますが、上の図のフェデラーの打点は、体の真横に近いようです)めがけて、ムチのように回転させて、ボールをひっぱたく感じでスイングするといいようです。ちょうどフトンたたきの感じでスイングするといいかも知れません。

(2)頭を動かさない・・・上の写真を見てもわかりますが、フェデラーは肩と上体は大きく回転させているにもかかわらず、頭はほとんど動いていないようです。正確なショットを打つためには、視点を一定に保つために、頭を動かさないことが大切のようです。

(3)スピンがかかるのは、上腕の自然な内旋(内側への回転)のため・・・・ボールをひっぱたいた後は、肩を自然に前に押し出す感じにするようです。そうすると、『テニスクラシック』の記事からコピーさせていただいた下の写真のように、空手の正拳突きと同じような上腕の動きによって、腕が内側に回転(内旋)して自然にスピンがかかるようです。



2006年のジャパン・オープンでのフェデラー

残念ながら、フェデラーは2006年のジャパン・オープンに出場して優勝したときしか、来日したことはありません。わたしは、準決勝の、ベンジャミン・ベッカー(ドイツ)との試合(2006年10月7日)を見に行きましたが、今となってみれば、貴重な経験だったことになるため、その時の写真をご紹介します。

当日は確か、有明コロシアム始まって以来の入場者数(確か1万人くらい)だったと思います。前の試合が終わって、フェデラーが登場して練習を始めると、下の写真のように、上の方の席の人が、一斉に写真を写しに降りてきて通路がいっぱいになりました。手前がベッカーで向こう側がフェデラーです。この写真から、貴賓席以外はほぼ満席になっていることが分かると思います。


下の写真はフェデラーのフォアハンドの写真ですが、肩がかなり回転しているにもかかわらず、あごが打点の方向に残っていることや、スイングにめりはりを付けるために、左手の手先まで緊張していることが分かると思います。

試合が終わって退場するところですが、大変な声援でした。

(2009年10月14日)。

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