村瀬加奈子さんはチリの日本大使館・経済班でODAコーディネーターという重要なお仕事をされているそうです(付録:私のお返事・・・「3.11」から1年経った日本)

このホームページにたびたびご登場いただいいている村瀬さんが2012年3月末にメールを下さいました。そのメールによれば、村瀬さんは、チリの日本大使館でODA(政府開発援助)コーディネーターというお仕事をされているそうです。具体的には、二国間援助の中の、「草の根・人間の安全保障無償資金協力」(略称「草の根無償」)を担当され、月に1~2回チリ全国に出張されているとのことです。 チリと日本の関係をより密接にする上で大変重要なお役目のようです。英語とスペイン語に不自由しない上、いろいろな人に気配りをして盛り上げるのは、村瀬さんの特技ですから、村瀬さんにぴったりのお仕事という気がします。最後に「両国の文化的背景についての知識と言語を操り、双方の言い分からプラス要素を取り出し、より良いものにしていく、ということにやりがいと責任を感じます。まだまだ、世界には学ぶことが一杯です」と書かれていますが、村瀬さんの張り切りぶりが浮かんでくるようなコメントだと思いました。また、村瀬さんのようなfriendlyな大使館員が窓口になっていると、チリの皆様の日本に対するイメージも向上するのではないかと思います。村瀬さんのご活躍をお祈りします。

メールの最初に「3.11」1年後の日本の様子について尋ねられていますので、最後に「(2)私のお返事・・・「3.11」から1年経った日本」も追加しました。

(1)村瀬さんから2012年3月26日にいただいたメール

お元気ですか? もうすぐ「3.11」から1年が経ちますが、現状はどうですか。 

大使館での仕事も慣れてきた、真夏のチリで、私が毎日どんなことをしているのか、ご紹介します。在チリ日本国大使館の経済班での、ODAのコーディネーターというのが与えられた使命です。ODAというのは、Official Development Assistance (政府開発援助)を指し、日本と外国と友好関係を深めていくために使われる国際援助のことです。

援助受取国とされている国と地域に対し、経済開発や福祉の向上を目的として贈与、及び条件の緩やかな貸付を行います。日本の国際援助は、日本からチリへといった二国間援助と、世界銀行や国連などの国際機関へといった多国間援助とに分かれており、私は二国間援助の無償資金協力に携わっています。無償資金協力はさらに、(1)国際協力機構(JICA)の行っている青年・シニア海外協力隊という技術協力を行うもの、(2)「草の根・人間の安全保障無償資金援助」という、人間が生きていく上で最低限必要とされる、病院、教育、食料、環境などに関係する支援に分かれています。私が行っているのは、この無償協力の(2)「草の根・人間の安全保障無償資金援助」という経済支援です。この援助では、各案件につき1千万円を上限として返済の義務なしで供与されます。チリでは99年から始まり、2011年までの12年間で166件、つまり16.6億円相当の援助をしてきたわけです。自分の払っている税金の16.6億円がチリに使われているなんて知っていましたか? では、なぜ日本の税金をわざわざ海外で使用するのか、という疑問を持たれるかもしれません。それは、両国の外交関係を良好に保つこと、日本のイメージアップ、歴史上で日本が相手国に助けられたことへの恩返し、相手国が大切な外貨を使って車、やハイテク技術という日本製品を買い続けてくれたことで日本が経済大国となったことへの恩返し、など他にも理由は沢山あります。 

チリは他の中南米の国々と比べて、非常に発展している国です。しかし同時に格差の激しい国でもあるため、地方の貧困地域にはまだまだ経済協力が必要不可欠になります。チリだけではなく、多くの発展途上国が王様と野良犬くらいの格差が日常風景であるような場所なのでしょう。日本でも格差社会という言葉がやっと注目され始めましたが、日本以外の国で格差社会は当たり前のことのような気がします。 

このODAで、例えばこのような案件を行っています。 
- 老朽化したり、地震で破壊された、義務教育学校の建設
- 病院のベッドや必要最低限の医療機材の購入
- 救急車や消防車の購入、又は日本からリサイクル輸入
このように、人間が生きていく上で最低限必要なものを支援しているわけです。

このような案件の募集、選定、調査、完成式、2年後の現状調査、という一連の流れを行っています。月に1、2回はチリ全国に出張があり、南北に長い4330キロ(日本の約二倍の面積)を一人で、時には大使と共に駆け回ります。大使や現地の政治関係者、メディア、色々な国の色々な地位の人々と共に仕事ができること、そして何より日本とチリの友好関係を築いていくことが仕事の楽しみです。お金を出す側の日本人の意見(私たちのボスは外務省)と、現状と必要理由を訴えるチリ側、どちらの意見も一理ありますがなかなか一筋縄ではいきません。両国の文化的背景についての知識と言語を操り、双方の言い分からプラス要素を取り出し、より良いものにしていく、ということにやりがいと責任を感じます。まだまだ、世界には学ぶことが一杯です。 

Murase

(2)私のお返事・・・「3.11」から1年経った日本

・復興は始まったばかり

・私はこの1年、家のことが忙しくて、(ホームページの更新もほとんどできなかっただけでなく)震災からの復興のためにご協力できたのは、これまでで最大額の寄付をしたことくらいで、復興ボランティア活動をしたり、被災地を訪れたりしたことはありません。ただ、新聞、テレビの報道から判断すると、被災者の方々の大半は、仮設住宅に入居したり、親戚の方に身を寄せられたり、全国各地の地方公共団体が用意した一時居住のための住宅に入られるなどしたため、住むところがないという状態はほぼ解消されたようです。

しかし、仮設住宅の場合、今まで住んでいた場所から離れた場所に、互いに面識のない方々が集まって居住するというケースがかなりあり、ご老人の場合、孤独感から、家に引きこもりになったり、自殺されたりするケースもかなりあったようです。県外に避難された方の場合には、全く異なる環境に慣れるのも大変だと思いますが、ただでさえ不景気なので、働く場所がなかなか見つからないケースが多いようです。

「3.11」からの復興の難しい点は、震災前の状態に戻すことが解決策になるとは限らない点だと思います。海沿いの町の復興では、津波対策のため(だけでなく、場所によっては数十㎝の地盤沈下〔福島第一原子力発電所でも50~65cmもの沈下があったようです〕があったため)に、盛り土をして地面を高くしたり、高台に移転するなどの方法が考えられていますが、具体的な復興計画が固まったところはまだほとんどないようです。

・原発事故から何も学ばなかった野田首相

国際原子力機関(IAEA)の評価尺度でレベル7と人類史上最大級の事故を起こした福島第一原子力発電所は、メルトダウンを起こし、溶けた核燃料がどのような状態になっているのかが分からず、圧力容器が破壊されているため、依然として膨大な放射能を放出し続けているだけでなく、高度汚染地域から、放射性物質が徐々に全国に拡散しているようです。東京都心でも、新聞などに公表されている地表上1mでの線量では毎時0.1マイクロ・シーベルト以下のようですが、震災直後にAmazon.comから購入した専門家用の線量計で地表面の線量を測定すると、事故直後は毎時0.1マイクロ・シーベルト以下でしたが、最近では、毎時0.3マイクロ・シーベルト以上になっているようです。爆発した4機の原子炉の廃炉は決定しましたが、廃炉のためには少なくとも30年の年月と数10兆円の資金が必要なようです。放射能汚染地域からの避難者数は、政府発表でも11万人以上に達していて、まだほとんどの方々が帰宅できていないようです。

原発事故は、これだけ甚大な被害を引き起こし、事故の原因は、電源の喪失だけでなく、地震の揺れによって、炉心が破壊された可能性もあり、非常用電源の確保だけでは事故を防止できるかどうかはっきりしないにもかかわらず、野田首相は、昨年末に、定義のはっきりしない「冷温停止状態」という用語を創作して、「冷温停止状態」を宣言することによって、事故が収束したかのような内容の宣言をしたただけでなく、最近では、大飯原発の再稼働を強行しようとしています。このような対応は、巨大なリスクが顕在化したあとも意図的にそれを無視し続けているという意味で、大震災前の自民党政権時代より悪質と言わざるを得ません。原発の再稼働に徹底的に反対した菅政権とは180度政策を転換したという印象を受け、野田首相は震災から全く学ばなかったと言われても仕方がないでしょう。

2016年3月25日追記
・・・野田氏については『四文字首相は『オール霞が関』の操り人形』もご参照ください。

・民主党の政策は自民党と同じになった

野田首相が、再稼働を急ぐのは、電力会社、原発の輸出で儲けようとしている電機メーカー、経済産業省、御用学者その他、原発の恩恵を受けてきた「原発ムラ」の意向を受けたものと考えられます。さらに、野田政権になってから、財界、官僚組織への配慮のために、自民党政権時代の政策がそのまま復活した例が多数ありますので、ご紹介します。

1)消費税率の5%から10%への増税に不退転の決意で臨むと公言
・・・・民主党のマニフェストでは、消費税は引き上げないとされていたようですから、公約違反であり、10%という水準は元々は自民党の発案のようです。消費税率引き上げのことを表現するのに、社会保障という「アメ」も追加して、「社会保障と税の一体改革」と表現するのも、国から地方公共団体に支払う地方交付税の削減と「アメ」の税源移譲などを組み合わせた小泉政権の「三位一体改革」を連想させられます。小沢一郎氏も言っているように、増税する前にやることがあるのではないでしょうか。つまり、野田首相はマニフェストに盛り込んだ、国家公務員人件費の2割削減のことは忘れたようです。とはいえ、これは、多数の公務員が加入している「連合(日本労働組合総連合会)」が重要な支持基盤となっている民主党にとっては一番実現が難しい公約なのかも知れません。

2)大規模公共事業の再開・・・・
2009年衆院選の選挙公約だった「八ッ場ダム建設全面見直し」を、野田首相は就任早々あっさり撤回し、本体工事費用を予算計上しました。これほどの明確な公約違反は、有権者への裏切りであり、民主党の実態は自民党と同じだと思われても仕方がないでしょう。野田政権になって復活したのは、整備新幹線未着工3区間、東京外郭環状道路(外環道)、事業仕分けで廃止と判定されていたスーパー堤防など、自民党政権時代でさえ、問題とされていた公共事業の多くが復活してしまいました。

3)公務員優遇には全く手付かず・・公務員の平均年収が1,000万円に近く、正規労働者の平均の倍以上、非正規労働者の場合には2~300万円が普通ですから、比較になりません。これが財政赤字の主因となっているにもかかわらず、全く手付かずと言っていい状態です。一番あきれたのは、人事院が国家公務員の給与を2012(平成24)年度について前年度比で0.23%引き下げるという勧告を出したのに対して、野田政権はこれを拒否したケースでした。マニフェストには、国家公務員人件費の2割削減を盛り込んでおきながら、0.23%の引き下げを拒否するというのでは、これからはマニフェストの内容を誰も信用しなくなるのではないでしょうか。

4)「年金一元化」もうわべだけ・・・『日本経済新聞』(2012年4月13日付)の「官民格差解消棚上げ・・年金一元化、公務員高給付温存も」という記事によれば、民主党の「厚生年金と共済年金の「一元化」」では、公務員は月収の15.8%の保険料を支払えばいいのに対して、会社員は16.4%払わなければならず、月収36万円の場合、毎月2,000円公務員の方が少ない支払いで済むことになるそうです。一方、給付(報酬比例の年金)では、公務員の共済年金が約12万円と、会社員の厚生年金の10万円よりも2割も多いそうです。つまり、同じ保険料支払い額に対して、公務員は会社員よりも25%も多く年金をもらえることになります。このような不平等を放置する神経もさることながら、この制度を「一元化」と呼ぶ図太さにはあきれます。

日本の財政赤字は世界で最も深刻で、このまま進めば5年程度で破綻がする可能性が強いようです

このホームページを初めてから、9月で15年になりますが、問題1(政治)で指摘した公務員数や待遇の問題はほとんど改善がみられません。民主党への政権交代によって、公共事業削減に向かう希望が生まれましたが、野田政権の誕生によって、こちらも振り出しに戻ったようです。そんなわけで、政府の借金である国債残高が急速に拡大し続けていて、今後も増加が予想されます。

日本の中央政府債務残高(国債だけでなく、借り入れなどのその他の負債も含む)のGDPに対する比率(つまり国の借金残高の経済規模に対する比率)は、下の経済協力開発機構(OECD)のデータによれば、2000年末にすでに、この表に載っている34カ国中で、ギリシャに次いで2位の106%でしたが、2009年末現在では、財政破綻し、「選択的債務不履行」状態にあるギリシャをはるかに上回る1位となっています。一方、80年代に公務員数を半減させたことを問題1(政治)でご紹介したニュージーランドは、財政健全化を達成し、中央政府の債務残高のGDPに対する比率は低い方から7番目の30%、チリに至っては、9%と低い方から2位になっています。

中央政府債務残高のGDPに対する比率(単位:%、2010年の数値の大きい順に配列)

年末 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
日本 106 124 138 141 157 164 162 165 181 184
ギリシャ 109 110 109 106 109 111 108 106 111 127 148
イタリア 104 103 100 97 96 98 97 96 98 107 109
ベルギー 100 99 98 95 93 92 88 85 90 95 97
アイスランド 34 39 35 33 28 19 25 23 44 87 81
ポルトガル 52 54 57 58 61 66 68 67 69 79 88
イスラエル 83 88 95 98 97 92 83 76 75 78 75
英国 42 39 39 39 40 44 43 43 61 75 86
ハンガリー 54 50 54 56 56 58 62 62 68 73 74
オーストリア 61 61 60 61 62 62 60 58 59 65 66
フランス 47 48 50 52 53 53 52 52 53 61 67
米国 34 32 33 35 36 36 36 36 40 54 61
オランダ 44 41 41 43 44 43 39 38 50 50 52
アイルランド 35 31 28 27 25 24 20 20 28 47 61
ホーランド 36 36 41 45 44 45 45 43 45 47 50
トルコ 38 74 69 62 57 51 45 40 40 46 43
スペイン 50 46 44 41 39 36 33 30 34 46 52
ドイツ 38 36 37 38 40 41 41 40 40 44 44
スウェーデン 57 49 47 48 47 46 42 36 36 38 34
デンマーク 55 52 52 50 47 39 33 28 32 38 40
フィンランド 48 44 41 44 42 38 36 31 29 38 42
カナダ 41 40 38 36 32 30 28 25 29 36 36
スロバキア 24 36 35 35 38 33 29 28 26 34 39
スロベニア .. .. .. 27 27 27 26 23 21 34 36
韓国 17 17 18 21 24 28 30 30 29 33 32
チェコ 13 15 16 19 21 23 25 25 27 32 37
メキシコ 21 21 22 22 21 20 21 21 24 28 27
ニュージーランド 32 30 28 26 24 22 22 20 21 28 30
ノルウェー 19 18 19 21 18 17 12 12 14 26 26
スイス 26 25 28 28 28 28 25 23 22 21 20
ルクセンブルグ 3 3 3 2 1 1 1 1 8 8 13
オーストラリア 11 10 9 8 7 6 6 5 5 8 11
チリ 14 15 16 13 11 7 5 4 5 6 9
エストニア 3 3 4 3 3 2 2 1 2 4 3

出所:経済協力開発機構(OECD、http://stats.oecd.org/Index.aspx?datasetcode=GOV_DEBT、2012年4月29日時点のデータ、 日本については2010年のデータが掲載されていなかったため、2009年のデータで順位を付けました)

この表からも明らかなように、日本の財政は危機的状態にあります。さらに、よほど大胆な政策を打ち出さない限り、あと5年程度以内に破綻する可能性が強いようです。というのは、(1)毎年の巨額の財政赤字のために、今後も国債という借金は増加が続くとみられ、(2)これまで国債を購入してくれていた銀行や郵便貯金が購入を続けられなくなる見通しであるためです。

日本の財政は毎年大幅な赤字を続けていますが、例えば2011(平成23)年度に国が使ったお金(一般会計歳出)は92.4兆円でしたが、収入(一般会計歳入)は48.1兆円でした。つまり、国全体としてみれば、収入の1.9倍の支出をしていることになります。その差額(44.3兆円)は借金(国債)でまかなわれていますので、この分だけ毎年借金が増え続けています。

なぜギリシャは財政破綻したにもかかわらず、日本は赤字体質を維持できてきたかと言えば、ギリシャ国債は海外の銀行などの外国人が国債全体の過半(米国でもこの比率は34%)を保有しているため、価格が下がる見通しとなれば、損失を防ぐために、すぐに市場で売却され、このため国債の価格が低下し、(国債の価格は、その国債を満期〔償還期限〕まで保有した場合に得られる利回りで表示されるのが普通です。例えば、残存期間が1年の国債の価格が満期払い戻し額〔償還額〕の99%であれば、利回り1%、98%であれば利回り2%と表示されます)利回りは上昇します。これに対して、日本国債は発行残高(現在約700兆円)の92%が国内で消化され、その64%(発行残高全体の60%)を銀行が保有しています。そのため、満期(正式には償還期限)まで保有しても問題ない場合が多く、市場で売却する必要性は相対的に低いと言えます。その結果、依然として高い価格(つまり、非常に低い利回り)が続いています。

銀行が国債を保有するのは、貯蓄がわずかずつ(1~2%)とはいえ増加を続け、景気低迷のため、国内企業の資金需要が低迷しており、企業向け貸し出しを伸ばすことができないためです。ただ、銀行もあと5年程度以内に、国債をこれまでのように買い続けることができなくなるとみられます。というのは、老齢化によって貯蓄率の低下が見込まれ、預金残高が減少に転じる見通しで、負債である預金と資産である貸し出し・運用をバランスさせるために、その分何かを売って調達する必要に迫られるとみられるからです。

日本の貯蓄率(収入に対する貯蓄額の比率。実際には、収入から支出を差し引いた金額を貯蓄と考え、その金額の収入に対する比率のこと)は1970年頃には30%程度の水準にありましたが、1991年頃には15%程度まで、さらに2008年には2.5%まで下落しました。その後、恐らく団塊世代の定年退職による退職金収入の影響のために、6%くらいまで戻していますが、今後5年程度でマイナスになる可能性が高いとみられます。これは、今後高齢化によって貯蓄をする人が減り、貯蓄を食いつぶす人の割合が高まるとみられるためです。

その場合、預金は減少に転じ、銀行は貸し出しを減らすか、国債を売るなどの方法で預金の減少に対応することを迫られることになります。銀行が、国債を買い続けられなくなった場合には、国はこれまでのような低金利で国債は発行(つまり、誰かに買ってもらうことが)できなくなり、ギリシャ同様の財政破綻に至る可能性が高まるとみられます。

三菱東京UFJ銀行も2016年頃の国債価格の急落リスクを想定

銀行でも、すでにこの危機的状態に対する対応を進めており、『朝日新聞』(2012年2月2日付)のトップ記事「日本国債の急落を想定・・・三菱UFJ銀危機対策」によれば、三菱東京UFJ銀行が日本国債の急落に備えた「危機管理計画」を作ったそうです。この計画によれば、「数年後に(国債の)価格が急落(金利が急騰。具体的には、10年国債で現在の約1%から2016年頃には3.5%に上昇)して金利が数%に跳ね上がり、損を少なくするために、短期間に数兆円の国債を売らざるを得なくなることもある」と想定しているそうです。その場合、国債発行に支障を来し、国による年金などの支払いがこれまで通りに行える可能性は低いと言わざるを得ません。

結論的に言えば、震災によって壊滅的な打撃を受けてから1年経った日本は、震災を跳ね返して復興が本格化するというよりも、ひたすら旧来の政策を続けることによって、アレックス・カー氏が「犬と鬼」(問題64(社会)をご参照ください)で指摘した「壮大な難破」に向けて突き進んでいるように見えます。

村瀬さん、暗い話ばかりですみません。考えてみれば、財政赤字のGDPに対する比率が184%の国が、わずか9%の国にODA(政府開発援助)をするというのは、かなり大盤振る舞いかも知れませんね(2012年5月4日)。

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