「胆振東部地震で被災した厚真町近くの病院の院長先生から被害状況についてのメールをいただきました」
2018年9月6日(木)午前3時9分に北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源として発生した胆振東部地震で甚大な被害を受けた厚真(あつま)町の近くに位置する病院の院長先生にお見舞いのメールをお送りしたところ、お返事の中で、詳しい状況を説明してくださいました。このお返事から判断すると、一般市民、特に災害弱者である患者さんに対する被害は新聞などで我々が知ることができる以上に深刻なようです。先生のお許しを得てメールをご紹介させていただきます(カッコに入っているフリガナは私が追加したものです)。
9月7日(金)午前8時4分にいただいたメール・・・地震お見舞いのメールありがとうございます。お陰で私や札幌の友人らも被害なく無事でした。地震後全道的に停電がみられ断水の噂(うわさ)もあって、昨日は食べ物や水を求めて店は大勢のお客でいっぱいでした。苫小牧の大型のスーパー、スタンドも営業中止、交差点も信号機が使えない状態のためノロノロ運転で何とか職場に行った状態です。午後から休診としました。苫小牧は本日真夜中にようやく電気が使えるようになりましたが、・・・札幌の一部ではまだ停電とのことです。現在心配しているのは震度7の厚真町からから通っている患者さんのことです。元当院の看護師長をしていた人の住宅が半壊したとの情報があり、心配されます。まだ時々余震がありますが、最近は最大の大型台風などがみられたりして、人間の我儘(わがまま)さに地球が怒っているようですね。今のところ大丈夫ですので安心してください。
9月8日(土)午前9時16分にいただいたメール・・・・・メールありがとうございます。経営効率から震源地に近い厚真町の火力発電所に電力供給を集約した弊害で地震の影響が少ないところでも停電が長時間続きました。北電(北海道電力)では泊原発からの電力供給が中止された影響が大きいなどと、とんでもない弁解を始めています。
昨日は勤めている診療所も途中まで停電が続き、電話が利用できず、通院患者さんのための送迎バスも(交差点の信号が作動しないため)中止せざるを得ず診療すべきか悩みましたが、患者さんは地震の不安がある中で受診・服薬の不安が重なることが案じられ結局再開しました。診察料は後払い(外来パソコンが使えないため)、薬は錠剤のみ、粉薬は錠剤に代えたりして対応、それでも予約患者さんの1/2程がタクシーや知人・親戚の車に乗って来院しました。各地域からこられた患者さんの状況は様々でいまだ停電・断水が続いていたり、危うく箪笥(たんす)の下敷きになるところであったなどもありました。やはり一番心配しているのは厚真町の状況で、そこからこられた人は通院途中まで消防・自衛隊の先導で車を運転、自分の家も含めてほとんどの家屋が倒壊、現在避難所生活を送っていること、知人親戚が土砂に埋もれて行方不明との事でした。当診療所の事務員の親戚(高校生やその父親‥その後死亡で発見)も被害を受け、現地に行くことで休ませました。厚真町からの患者さんが何人もいますので安否が案じられています。今後災害による病状の悪化、ptsd(心的外傷ストレス障害)の発症を心配しています。何が起きるか分からない現在、一日一日を大事に生きたいものです。
9月8日(土)午後2時34分にいただいたメール・・・・
9月9日午後4時30分にいただいたメール・・・昨晩苫小牧市内の開業医のドクター数人と会いましたが、特に大変なのは、透析患者が停電のため対応できないため市立病院にお願いしたり、手術は中止、緊急患者の対応も出来ず、入院患者の食事にも苦慮している(停電と断水のため)との話がありました。昨晩まで停電の地区が苫小牧市内でもまだあるようです。現代社会は電気がなければあらゆる活動が停止することや社会のもろさを改めて実感させられました。
以上が引用部分です。院長先生、掲載を許可していただいてありがとうございました。
このメールから私が感じたことをいくつか追加させていただきたいと思います。
(1)先生は、交通信号が作動しないため、送迎バスの中止せざるを得ず、診察すべきかどうか迷われたとのことですが、患者さんは地震による不安を感じていて、受診・服薬をできなくなることによってさらに、追い詰められる可能性があるとお考えになって、診察をされることを判断されたそうです。電気が通じていないので、診察料は後払い、薬は錠剤のみで対応されたとのことです。このような柔軟かつ、配慮の行き届いた対応がされたことからこの病院が患者第一主義であることが分かると思いました。
(2)病院関係者のご親戚がお亡くなりになったり、元看護師長をされていた方の住宅が被害を受けただけでなく、長年通院し訪問看護をされていた高齢の単身生活者の方が自宅トイレに座ったまま亡くなって発見されるなど、患者さんや病院関係者の方も多数被災されたとのことですが、一般に報道されている以上に多数の方が震災の影響を受けたり、犠牲になっているのではないかという感じがしました。
(3)厚真町から通院する方のために、
(4)大規模な停電が発生すると、交通信号や鉄道が止まったり、コンピュータが使えなくなったりするなど、いかに社会全体が打撃を受けるかということを痛感させられました。特に、透析をされている方とか人工呼吸器を使っていらっしゃる方、緊急手術が必要な方々にとって停電は命にかかわる問題ですね。
泊原発では核燃料プールの冷却のための電力が外部から得られなくなったため、非常電源に頼らざるを得なかったことも、恐ろしいことですね。全道の消費電力の半分以上を1つの発電所に依存するというのも、リスク管理意識欠如としか言いようがありません。北電(北海道電力)のリスク管理体制は最悪だったようですし、ユーザーへの説明も不十分だったようですね。
米国政府による2022年の発電コストの予想を日本式にkw当たりに換算すれば、原発の発電コストは11.0円と日本の電気事業連合会の公表値5.3円の2倍以上となり、太陽光(7.4円)の1.5倍、風力(5.8円)の1.9倍、液化天然ガス火力(9.25円)の1.2倍となり、原発は採算から考えても再生可能エネルギーにとても太刀打ちできないことが分かります。やはり今後は世界の流れに従って再生可能エネルギーを電力の中心に据えるべきだと思います。その場合、このデータから分かるようにコストを下げることが可能で、しかも発電能力が分散されるため、リスク管理にもつながると思います。さらに原発の専門家は大きな地震に耐えうる原発を設計、建設するのは不可能であると言っています(この点に関しては、「グリーンピースの原発の専門家も東日本大震災規模の地震に耐えうる原発を設計・建設するのは不可能とみている」をご参照ください)ので、原発はすべて直ちに廃炉にすべきだと思います(2018年9月9日)。
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