サラリーマンがベジタリアンになろうとすると・・・

約1年前の2006年5月に、問題77(健康)答えの最後で、「肉のことをいろいろと調べるうちに、肉や魚は食べない「ベジタリアン」になろうと考えるように」なったことをご報告して、そう考えるようになった理由も、「わたしがベジタリアンになることにした五つの理由」でご説明しました。今回は、わたしのようなサラリーマンが「ベジタリアン宣言」をするとどんなことが起こったがをご紹介しましょう。

(1)かみさんの説得が一番大変

家庭での食事をほぼ全面的に依存しているかみさんを説得するのが一番大変でした。食材の選定、調達、調理、栄養管理、食事の際のマナーなど、食事に関係することすべてについて、わたしよりはるかに豊富な知識、経験を備えているかみさんに、「味おんち」で「手をかけた料理を出しても違いが分からない」、「何を出してもよく食べる」、「料理を食べても、どんな食材を使っているかが分からない」、「テレビを見ながら食事をする習慣がある」などと低い評価しか与えられていない宿六が、食事を野菜だけにしたいと言っても、全く説得力がないのは、当然かもしれません。抵抗が大きかった最大の原因が、ご本人も子供も、ベジタリアンになるつもりがないため、これまでの料理のほかに、ベジタリアン向けの料理を作るという二重の手間がかかることでした。

最初は全然相手にされなかったので、料理のうちの野菜だけを盛りつけてもらうようにお願いすることにしました。この作戦に対する最初の反応は、せっかく手間ヒマかけて作った料理を、一部だけしか食べないのは許せないというものでした。せっかく肉じゃがをつくっても、ジャガイモとタマネギしか食べないのは、作り手に失礼ではないかというご意見はよく理解できます。

それでも、何度も説明した効果があったためか、最近では、朝食はサラダとパンになり、肉料理はあまり勧められなくなってきました。また、以前に比べて、わが家の食事もどちらかと言えば、野菜中心になってきたような気がします。

(2)日本育ちのインド人に、ベジタリアンの日本人には初めて会ったと言われました

昨年11月に参加した、ある会合の出席者は日本人が約350人に外国人が約100人の合計約450人でした。この会合では、ランチはベジタリアン向けのものが用意されているとのことでしたので、わたしもそれをお願いしました。ベジタリアンには、専用のテーブルが用意されていたため、ベジタリアンの顔ぶれを見ることができました。

一番驚いたのは、20人くらいだったベジタリアンの中で日本人はわたしだけだったことです。つまり、日本人の中で、ベジタリアンの占める比率は、このサンプルでは、約350分の1ということになります。外国人グループでは、この比率は20%くらい(20人程度/100人程度)ということになります。外国人のうち半分くらいが、インド/パキスタン/バングラデシュらしい方々で、白人は5人くらい、アフリカ系らしい方が2-3人、中近東系とみられる方が2-3人という感じだったと記憶しています。

席が隣り合わせになったのは、生まれも育ちも東京という30歳くらいにみえるインド人の方でした。その方に、どうしてベジタリアンになったのですかとお聞きすると、「家族が全員ベジタリアンなので、あまり考えたことがない」とのことでした。さらに、「生まれも育ちも日本ですが、日本人のベジタリアンにお会いしたのは、あなたが初めてです」と言われました。また、逆にわたしがベジタリアンになった理由を尋ねられましたので、「わたしがベジタリアンになることにした五つの理由」のことをお話しすると、"You have many reasons!"と驚かれました。

ヒンズー教徒は牛肉は食べないということは知っていましたが、家族ぐるみでベジタリアンである理由は、宗教的な問題とも絡む可能性があるので、お聞きしないことにしました。また、本郷三丁目のインド料理店の店員のインド人の方によれば、インドでは人口の80%はベジタリアンであるとのことでした。ただ、インド料理店最寄りの某大学の文化人類学の教授の方にかみさんがお聞きしたところによれば、ベジタリアンの比率はそれほど高くはないはずだとのことでした。

なぜ、日本人にベジタリアンが少ないかと言えば、テレビの娯楽番組のほとんどは食べ物関係で、毎日のように、これでもかと山海の珍味(多くの場合、レストランや食品店を喜ばせる、高価な食材を使ったもの)が紹介されていることや、問題76(食文化)答えの最後でご紹介した、自分で物を考える習慣に乏しいという日本人の特徴も関係しているのではないかと考えています。

アメリカには、セブンス・デイ・アドベンチストというベジタリアンとなることを信者に求めている宗教があり、わたしの友人のアメリカ人でも、「クレイグさんとグレースさんのネパール旅行の話」でご登場いただいた、グレースさんをはじめ何人かの方がベジタリアンです。クレイグさんとグレースさんは、2004年に離日されましたが、昨年仕事で訪日されたときにお聞きしたところによれば、グレースさんは「学生だった83年以来ハンバーガーは食べたことはない」とおっしゃっていた。そんなアメリカ人がいるとは驚きでした。残念ながら、日本人のベジタリアンの友人はいません。

(3)ランチでも一苦労

会合で席が隣になったインド人の方に、ベジタリアン・ランチを探すのは大変でしょうと聞かれましたので、日本人の場合は、そば屋に行けば、肉、魚が入ってないランチが食べられますと言ったところ、(「それは甘い」とはおっしゃいませんでしたが)、そば屋のスープ(つまり「そばつゆ」)には鰹節が使われているので、ベジタリアンとは言えないとのことでした。そこまでご存じとは、さすが日本育ちのベジタリアンだと感心しました。

この方が、東京でベジタリアン・ランチを入手できる場所を教えて下さいました(下記1から3)ので、わたしが調べた分も加えてご紹介します。

(1)SUBWAY(チェーン店) --- ベジタリアン向けのサンドイッチがあります。ベジーデライト(VEGGIE DELITE、M \270、パンの種類によって218-237kcal、L \540、436-474kcal)、アボカドベジー(AVOCADO VEGGIE、M \360、277-296kcal、L \660、554-592kcal)
(2)benugo(チェーン店) --- Vegetarial Sandwitch 確か単価は\450。肉、魚が入っていないサラダもあります。
(3) PITA THE GREAT(東京の赤坂ツインタワー新館2階、赤坂2-11-17、03-5563-1851) --- pitaという中近東のパンに野菜のフライを挟んだサンドイッチ。イスラエル出身のおじさんが一人で、パン焼き、フライ揚げなど、すべてを行っている。例えば、BIG PITAは、すりつぶした「ひよこ豆」を丸くまとめて挙げたもの(ファラフェル、Falafel)に新鮮な野菜をそえ、タヒニ(セサミ)ソースをトッピングしたもの。この店はすべてベジタリアン料理で、お客さんにはインド人の方が多いようです。
(4) am/pm --- 最近、ベジタリアン・サンド、ポテト・サラダ・サンドを始めたようです。
(5)インド人のやっているインド料理店では、ベジタリアン・カレーというメニューが大体あるようです(わたしがよく行くのは、六本木、赤坂などにある「MOTI」)。
(6)「ぴーまん」(東京の新宿御苑の横にあるカレー屋さんは野菜カレーがメインのようです。野菜ジュースの種類も豊富です)
(7)「はーべすと」(野菜中心の料理が食べ放題、2000円くらいします。東京では、池袋のメトロポリタンプラザ8階にありますが、最近店舗数が急増しているようです)

どうしてベジタリアン料理があまり普及していないかというと、ベジタリアンの数が少ないことも考えられますが、弁当に肉、魚、卵、エビなどが入っていないと、付加価値が付けられない、つまり高い価格設定ができないためではないかと思います。つまり、もうけという点から言えば、ベジタリアン用のメニューや弁当はあまり「おいしくない」のではないかと思います。

そのためなのか、「ベジテリア」というベジタリアン料理を標榜している弁当店で、野菜だけのランチを探そうとすると、結局、1個180円もする梅干し入りのおにぎりしかないというようなことが起こるのではないかと思います。これは看板に偽りありという感じで、上記インド人もあきれていました。

精進料理や中国から伝えられた精進料理である普茶(ふちゃ)料理もベジタリアンですが、これらを提供している料理店は、ほとんどがかなりの価格になりますので、特別のお客様をご招待するときくらいしか使えない感じです(2007年3月31日)。

(左は姪が送ってくれた写真で、誰が写したのか分からないそうです。)

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