村瀬加奈子さんがチリの方と結婚されました・・・新年からチリの日本大使館・経済班で働かれるそうです
このホームページで三度ほどご登場いただいた村瀬加奈子さん〔ご登場いただいたページ:「チリ在住の村瀬加奈子さんが「クイズ”ひつまぶし”」に「ランクイーン」を付けてくださいました」(2009年12月6日)、「巨大地震が発生したチリ在住の村瀬加奈子さんからご無事であるというメールが届きました」(2010年2月28日) 、 「巨大地震が発生したチリ在住の村瀬加奈子さんからの続報」(2010年3月4日、#74) ・・・「余震が続くバルパライソ」という記事を下に追加しました(2010年3月16日)〕がチリのサンティアゴ在住のヘルマンさんと2011年1月1日に結婚されました。ご結婚おめでとうございます。結婚式は名古屋で挙げられ、その後フィリピンに3カ月滞在され(長期ハネムーン旅行?)、その後サンティアゴで新婚生活に入られました。2011年の4月からは、キヤノンのチリの現地法人で働かれていましたが、2012年初めからは、サンティアゴの日本大使館で働くことになったそうです。メールによれば、「来年1月から日本大使館の経済班で働くことになりました。
この機会に、2011年中に村瀬さんからいただいたメールをご本人のお許しを得てご紹介させていただきます。チリで大規模な学生運動やゼネスト(ゼネラル・ストライキの略、全国全産業の労働者が一斉にストライキを行うこと。都市または1産業部門全体の労働者が協同しておこなう大規模なストライキのこともいう)が起こっていたとのお話ですが、これらの動きについては、日本ではほとんど報道されていなかったと思います。また、最後にメールと関係した「(4)平原綾香の「my Classics!」、「my Classics 2」、「my Classics 3」についての二つの困った問題」という文章を追加しました。
(1)8月のゼネストについての村瀬さんからのメール(2011年8月31日付)
日本の夏はどうですか。
結婚前と結婚後で変わったことは、メールをゆっくりと書く時間が減ったことでしょうか。最後にメールをしてから何週間か過ぎてしまいましたが、最近のチリで起こっている混乱を報告しておきたいと思って書いています。
チリでは、8月24、25日に「国が停止(ゼネスト)」したんです。というのは、ここ4ヶ月ほど学生運動が続いて社会問題化しているからです。何が起こっているかを、学生・政府・社会の様子からまとめてみます。
[時系列でみる学生運動]
1.大学生が中心となり、学生運動開始。 「教育をビジネスにするな!教育の無料化を求む!」
2.高校生もその運動に参加。
3.教師連合までもが参加。
4.与党が学生側を応援しつつ、野党を攻撃。政治の崩壊。
5.国民労働組合も参加。深刻な社会問題化。
[学生の様子]
この騒動の間、多くの公立大学、公立高校は閉鎖されています(私立のみ開講)。日本で言う東京大学、京都大学のようなTOP大学も含めてです。大学や高校では、門が閉められ、上下左右を教室の椅子が突き刺さっています。まるで牢獄のように、まるでアートのように…。
閉鎖されている間、学校内では何が起こっているのでしょうか。
学生による、まるでハイジャックのような乗っ取りです。門は閉められ、校内に鍵がかけられ、中心グループの学生がデモや政府との交渉条件の作戦会議をしており、一部の人しか中に入れない状態です。(もちろん授業は4ヶ月間放棄)何度か警察が占領された学校に入りましたが、暴れて逮捕されて、逮捕されなかった人によってまた占領が続いています。
学校閉鎖の対策として、インターネットや塾で授業を補っているようですが、このままだと、学生全員の留年や大学入試の中止も懸念されています。
高校生とか、学校行かなくて何するんだろう。
毎週木曜日に、全国の主要都市で学生運動が行われ、Santiagoだけでも毎回10万人以上の人が集まっています。
参加者は大学生、高校生、一般人、ムカついて暇してる悪人たち。
(90%の人はデモ行進しているだけですが、10%の悪人達が悪さするんだな。)
今までデモとか学生運動っていうとプラカードを持って、街の中心を占領しながら行進し大統領のいる政治の中心地へ向かう、というものでした。
でもこの学生運動はちょっと違います。
- 路上キス・デモ (さすがラティーノ)
- ビーチ・デモ (真冬に都会で水着姿)
- マイケルジャクソン・デモ (何万人もが一緒に踊る)
- ゾンビ・デモ (集団自殺ダンスで皆が道に倒れこんで、ゾンビになって踊る)
- 24時間マラソン・デモ (交代でデモ旗を持ちながら大統領家周辺を走る)
- 食べません・デモ (水分と栄養分以外、物質的なものを何も食べない。)
などなど、若者らしいアイデアで目立ちメディアの注目を引っ張っています。
しかし食べません・デモは、もう辞めて欲しい。
数人の学生が今日まで37日間、栄養失調で入院中。現在20キロ以上痩せてしまって、もう精神病になっている。本当に死んでしまいそう。
(これを書いた次の日に、このデモは終了しました。)
[政府の様子]
一部の大学から始まり、社会問題にまで拡大してしまったこの学生運動。
やはり、政府の責任も問われるでしょう。
さて、政治家は何をしているのか。
- 大統領が全テレビ局を通して、国民へ緊急宣言。
「教育省への予算を40億USドル増加。」(主に奨学金に使われる)
しかし、このお金は他の予算を削減し、教育省に流すようです。
つまり他のサービスの低下か税金の増加か、どっちにしろ国民に利益はないような気がしますが。
- 警察とデモ
デモを行う際は、「何時に、何処で、予想参加者」を警察に報告し許可を貰わなければなりません。
そうしたら警察が治安を守るためと言いながら、逮捕者を運ぶ大トラックや、デモで行進中の人々を攻撃するための放水車、目が痛くて息ができなくて鼻水がとまらなくなる(催涙)ガス車、非常時には過激ともいえる攻撃をする警察官を配置するんです。しかし、毎週続くデモや騒動から、無許可で勝手にめちゃくちゃにデモが行われています。
ロンドンのように、建物全てが放火されるとまでは行きませんが、銀行が放火されたり、商店はガラスが壊され盗難にあったり、一般車が焼かれたりということは毎週全国で起こっています。
チリには軍隊(陸水海)があるけれど、戦争がないのに戦争の練習をしている彼らよりも、毎週のように戦争のようなデモに参加している警察の方が本当の戦争に強い気がする。
毎回デモで何人の逮捕者や負傷者が出ていることやら。
そして、この2日間のゼネストによって2名の若者が、警察による発砲で死亡しました。
最近のニュースでは、この発砲事件についてばかりです。
- コミュニストへの道(野党が学生の味方となり、与党を攻撃。)
今まで20年以上Centre Leftだった政府(コミュニストではない)が、去年政権交代があってCentre Rightの超金持ちビジネスマンが大統領になったばかりです。
つまり、野党(C. Left) は与党(C. Right)を攻撃する理由として、学生や最低賃金ギリギリで働いている労働組合、少数派だが強力な力を持つコミュニストたちに協力して皆で与党をやっつけよう!という雰囲気です。
政治の崩壊。もう、ぐちゃぐちゃ。
[社会の様子]
社会問題化してから、新しいスタイルのデモが加わりました。
- 鍋叩きデモ
これ、20年ほど前のピノチェット軍事政権の時も、国民が狂ったように鍋叩いてたようです。
夜9時頃から、私のマンションの窓で叩くのはもうやめて…。大迷惑!!!
- 「国の停止日(ゼネスト)」の実行
学生運動から、国民労働組合の参加で一気に社会問題化したこのデモ。8月24日、25日には公共交通機関、病院、空港、自治体が停止しました。
この国民労働組合とは、最低賃金で過酷(又は不満足な)労働条件の中働く人々が中心です。日本と違いこのような人々は非常に沢山います。
プロフェッショナルが居る職場(給料や労働条件にある程度満足している会社)では普通に営業しているのですが、交通機関の停止で通勤不可能になったり、大通りのデモ行進により盗難や営業所の破壊など悪影響が出ています。キヤノンでは午後から強制帰宅が今までに4日ありました。
以上のようなことが日常で起こっています。
しかも私、Santiagoの中心部に住んでいるので、100メートル先の大通りで毎週木曜日デモがあり、夜9時には狂った国民が鍋を叩き、学生運動の混乱を利用して悪人たちが窃盗や放火を繰り返す。
信号や標識は壊れて横たわり、どこからこんなに大量の石を運んできたんだろうと不思議になるくらいの石、イシ、石が道路に溢れ、バス停の看板は燃やされ、大通りの中心で焚き火や爆発物が…これこそ首都の破壊!これを直すだけでもいくらかかるんだろう。
もしかしたら戦争ってこういうものなのかな、とも思います。
イスラエル人の友達がよく言っていた。
「War is like an earthquake.」
昨日まで、普通に歩いていたあの道が、よく通ったあの店が、 ナイ!
変わり果てた街を見て思う。
「あ~昨日まで平和だったんだ」
でも、分かった時にはもう遅い。
カイロでも、ロンドンでも、トリポリでも、そしてサンチャゴでも、きっとこの気持ち分かるはず。
もう書いてて悲しくなってくるほどです。
最初は、「学生運動なんて歴史の教科書でしかみたことないよ。
やっぱりチリは発展途上国で日本の20年前を歩んでいるんだな。」
と思っていましたが、チリ人にとっても「20年前を見てるみたいだ」らしい。
以上に書いたことは、もちろん事実だけれど、私もきっとメディアにある程度汚染されていて何が本当の学生運動で、誰が正しくて間違っていて、どうすれば解決できるのかは分かりません。
そんな混乱の中でも、歴史の1ページを歩んでいるな、と感じる充実した毎日を過ごしています。
とにかく安全に生きる、というのが毎日の目標です。
(2)「8月のゼネストについて」への私のお返事(2011年9月19日付)
・・・一部省略・・・ゼネストのお話大変興味深く読ませていただきました。原因は1968年のパリ5月革命と似ている気がしました。5月革命はその後世界中に飛び火して、日本でも各大学でバリケードが築かれたりしました。一番有名なのは東京大学の安田講堂の占拠で、学生を排除するために、ヘリコプターまで動員されました。
ただ、当時建物を占拠した、新左翼と呼ばれた複数のグループのデモは、ヘルメットをかぶり、手ぬぐいで覆面をして、長い竹竿(たけざお)を各自が抱えて前方に突き出すという物騒なものでした。それに比べると、チリのデモは平和的ですね。ただ、日本の場合は学生以外も加わるゼネストというのはなかったような気がします。
それにしても、家の近くで大騒ぎやら、略奪騒ぎがあるというのは、心配ですね。
死者も出ているようですので、騒動に巻き込まれないように、お気をつけください。
(3)ストのその後についての村瀬さんからのメール(2011年10月27日付)
・・・一部省略・・・
チリの教育無償化問題は、未だに続いています。
先日、再びゼネストがあり、学生集団が議会に無理やり押し入り騒動を起こしました。
20年間続いていたLeft政権が2010年にRightへと政権交代し、与野党が対立していることもこの教育問題に拍車をかけているようです。野党が学生側を援助しているため、このような議会押し入りも可能だったのでしょう。
今年は本当にデモが多いです。また、デモの度に銀行やビルのガラスが割られ、犯罪も多発しています。
この長期化する騒動のお陰で、少し政治に興味が出てきました。
日本でも政権交代がありましたが、与野党は対立関係にあるのでしょうか。
先日、クラシックバレー「ロミオ&ジュリエット」を観に行きました。サンチャゴ・クラシックバレー団は、世界的にもレベルが高く有名で非常に素晴らしい公演でした。
意外に男性バレーダンサーが多く、彼らも紙切れのようにひらひらと踊っていたことが印象的でした。
その中の一曲に、Classics!の曲もありましたよ。
Classics!は良いですね。有名な曲でも、クラシックだと硬い感じがしていましたが、日本語で現代風にアレンジしてあると聴きやすいです。また、歌詞は分からなくてもリズムは分かるので、へるまんも一緒に口ずさんでいます。
チリの春は、日本の秋ですね。どちらも、今が一番過ごしやすい季節だと思います。
皆様、お体にお気をつけて下さい。
また、いい写真がとれたらホームページに載せてくださいね。
へるまん&加奈子
(4)平原綾香の「my Classics!」、「my Classics 2」、「my Classics 3」についての二つの困った問題
CDのコピーをお送りした「my Classics!」、「my Classics 2」、「my Classics 3」を村瀬さんだけでなくへるまんさんも気に入っていただいたようですね。確かに、クラシックの名曲に歌詞を付けて、ポピュラー曲にするというアイディアはいいですね。ただ、Googleで「クラシックのリメーク」を探すとサラ・ヴォーンの「Lovers
concerto」=バッハのメヌエット、セリーヌ・ディオンやエリック・カルメン(Eric Carmen)の「All by myself」=ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番第二楽章など、同様な例が多数ヒットします。ちなみに、この手の曲で私が一番好きなのは、シルヴィ・バルタンの「Caro Mozart」(邦題は『哀しみのシンフォニー』)= モーツァルトの交響曲第40番ト短調の第1楽章です。ただ、これらの例のほとんどは、いわばシングル・ヒットで、たまたま気に入ったクラシックがあるのでそれをリメークしたという感じで、CD3枚(40曲、ただし、民謡、ミュージカルなど、クラシック以外の曲のリメークが4曲含まれています)が、ほぼまるごとクラシックのリメーク曲という例は、ポピュラー・ミュージックの分野ではないのではないかと思います。平原綾香のClassics三部作はそれぞれ大変気に入りましたが、困った問題が二つ起こりましたので、その話をさせていただきます。
第一の問題・・・元の曲を忘れてしまう
この種のリメーク版を繰り返し聞いていると、困った問題が起こります。これらCDに収録されている曲のオリジナルのクラシック曲を、たまたま耳にしても、平原綾香のCDに入っていた曲であるということは思い出すのですが、なんという曲だかは思い出せなくなることが、結構あります。個性の強い歌い方で、あらゆる曲が、いったん平原綾香流に消化されているため、原曲の影が薄くなってしまうのかも知れません。しかも、これらCDに収録されている曲の多くは私が一番好きなクラシック曲に含まれる(選曲にも感心しました)ため、元の曲を思い出せないというのは、非常にもどかしいことです。
曲名が思い出せない上、元の曲の聞こえ方が変わってくることもあります。例えば、「my Classics!」の1曲目に収録されている亡き王女のためのパヴァーヌの原曲〔逝ける王女のためのパヴァーヌ、Pavane
Pour Une Infante Defunte〕を久しぶりに聴いてみると、従来は、めりはりの利いたすばらしい曲だと感じていましたが、なにか寝ぼけた演奏のような印象を受けました。これはひょっとすると、微妙な感覚が、「my
Classics!」によって麻痺してしまったためなのかも知れません。
第二の問題・・・コード進行に違和感
実は日本の曲ではたまにあるのですが、「my Classics 3」に含まれる3曲に、和音の進行(コード進行)がおかしい部分があると思います。全くの素人の感じの問題なので、単なる誤解である可能性もあるとは思いますが、4曲目の「大きな木の下」39秒前後〔雨の日も日照りの時も・・・の辺り〕、7曲目「別れの曲」2分31秒前後〔春の日・・・の辺り〕、13曲目の「アランフェス協奏曲」1分18秒前後(歌詞は不明)のコード進行はおかしい気がします。「my Classics!」、「my Classics 2」にこんな場所はなかったことから、「my Classics 3」はちょっと手抜きがあった可能性があるかもしれません。
日本の曲ではたまにあると書きましたが、例えば、ヘンデルの「ラルゴ」とバッハの「主よ人の望みの喜びよ」を川井郁子氏が編曲・演奏した「サンクトゥス」では、「主よ人の望みの喜びよ」のコードだけでなく、8小節の主旋律の一部さえ書き換えられているようです。川井氏は東京芸術大学のご出身で、大阪芸術大学(芸術学部)教授でもあられるのですが、そんな方がなぜ主旋律を変更されたのか理解に苦しみます。
バッハの入門書、『J・S・バッハ 』〔講談社現代新書、 礒山 雅 (いそやま・ ただし)著〕で、バッハへの入門として推奨されている、ジャズのジャック・ルーシェによるPlay
Backや、同じく、ジョン・ルイスのピアノによる Preludes and Fugues ではこんな部分はなかったと思います。
和音が苦手な日本のポピュラー・ミュージシャン
どうも日本のポピュラー・ミュージシャンは和音が苦手のようです。これは伝統的な流行歌や民謡のヴォーカル部分で和音はほとんど使われていないためではないかと思います。海外のボーカル・グループのパフォーマンスの場合、それぞれのメンバーが異なるパートで、別々の旋律を受け持ち、しかもうまくハモっているという技を競っている感じです。また、歌手が何人かがテレビなどに一度に登場すると、やはりすばらしいハーモニーを聞かせてくれることが多いと思います。
ところが、日本のヴォーカルグループの場合、人数は多くても、同じ旋律を歌っている、つまり単なる斉唱である場合が多く、本当の意味での合唱(多声部の楽曲の各声部を複数の唱者が歌うと定義されている)になっていないためだと思います。歌唱力という面でも、小学校の学芸会でも、もっとまともな場合もある、という感じがするグループがあります。例えば、スマップやAKB48の歌は、まともな歌手が一人で歌った方がはるかにましという気がします。こういうグループが一番人気があり、そのCDがミリオンセラーになるというのは、日本の音楽ファンのレベルの低さを物語っていると思います。AKB48の場合には、複数のジャケットを用意したり、握手券や人気投票権などの音楽そのものとは無関係な特典を付けることによって売り上げを伸ばしたようです。
日経新聞の『回顧2011 - 音楽』(2011年12月14日付)という記事によれば、日本のCDや音楽配信(ダウンロード)の売上高を合わせた音楽市場の規模は2011年には1,570億円と、アメリカを8%ほど上回って、世界一になる可能性が高いそうです。この最大の理由は、米国では音楽の販売が、単価の低い配信に急速に移行しているため、CD売上高の市場全体に占める比率は40%まで低下したのに対して、日本ではこの比率は76%にとどまっているためのようです。ただ、CDの売り上げが、レベルの低い音楽に特典を付けて売り込むことによって支えられているとすれば、これを「音楽市場」と言っていいのかどうか疑問です(2011年12月27日)。
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